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CULTURE, INTERVIEW 2020.11.1

GRIND CULTURE COLUMN

BRIAN ROETTINGER

揺るぎない情熱と信念を
グラフィックに宿して

レコード、CD、DVDといったジャケットの中身を表現する要素として重要な役割を果たすグラフィックデザインは、作品の世界観を投影する総合芸術ともいえる。L.A.を拠点に活動するブライアン・ロエッティンガーは、さまざまなアーティストのジャケットデザインをはじめ、〈サンローラン〉などのファッションブランドへのグラフィック提供など、視覚を通して訴えかけるクリエイションを数多く生み出してきた。彼自身の根底に宿る音楽に対する情熱と、そこから派生し築き上げられた信念をもとに、グラフィックデザインに込められたメッセージを思考していく。

聴覚から導かれる
視覚的感性

幼い頃からの友人であるディーン・スパントが率いるロック・バンド、ノー・エイジのヴィジュアルアートを10年以上手がけ、その他にもジェイ・Z、マリリン・マンソンといったさまざまなミュージシャンのアルバムや、〈ヘルムート ラング〉、〈サンローラン〉といったファッションブランドにもグラフィックを提供するなど、ジャンルをまたいで幅広く活躍している彼のスタートラインは少年時代に触れたカルチャーにあった。「僕の10代は、スケートボードとパンク、ヒップホップで成り立っていて、その時期からビジュアルコミュニケーションについて考えはじめたんだ。父親がギターを弾いていたから、音楽は幼い頃から大切なものだったよ。そしてアートスクールで学んでから、建築に関する大学のグラフィックデザイナー / アートディレクターになり、同時に自分のスタジオをもったんだ」。ビジュアルの美学や、周りのコミュニティに対してどのように思考したらいいのか考えはじめたキッカケでもある音楽。12年前にはバンドを組んでいた経験もあり、数々のミュージシャンのジャケットを手がけてきたブライアンにとって、自身のルーツでもある音楽は切っても切り離せない存在と熱く語る。「音を通した感情表現が好きで、そういった音楽のフォームを楽しんでいる。僕の服、友人、そして人生は音を中心に巡ってるよ。でも同時に音楽に疲れてすべて同じように聞こえてしまうこともある。たくさんの音楽が早いサイクルで消費されている今、音楽ってそもそもまだ本当に“音楽”なの?こんな質問を自身に投げかけてしまうこともあるんだ」。

世界的に大ヒットを記録したマーク・ロンソンとブルーノ・マーズによる「アップタウン・ファンク」や、実力派R&Bシンガー・ソングライター、ミゲルによる「ワイルドハート」のジャケットのデザイン。多くの要素を入れ込むというより、削ぎ落とされたデザインの中に落とし込まれた強いグラフィックが、主体となるアーティストの世界観を立体的に映し出す。

キング・オブ・ヒップホップとも称されるジェイ・Zによる「マグナ・カルタ…ホーリー・グレイル」。そしてラッパー、シンガー、俳優など様々な顔を持つエンターテイナー、チャイルディッシュ・ガンビーノによる「ビコーズ・ジ・インターネット」など、今や世界的に名を轟かせるアーティストのジャケットもブライアンの手によって完成されている。彼の特徴のひとつでもあるブラック&ホワイトを基調とした作品から、色鮮やかなものまで、デザインの幅広さが伺える。

未知なるデザインの
可能性を求めて

音楽を愛しすぎるがゆえ、音楽の存在意義まで思考してしまう計り知れない探究心は、彼のクリエイティビティに対するマインドにも強く結びつく。「単に視覚的魅力があるものよりも、もっと潜在的魅力があるべきだと信じているんだ。なぜこれをつくっているのか、今つくっているもので何を伝えたいのか、自問自答を繰り返して得た答えが進むべき方向性へと導いてくれる。時には困難に陥るけど、こうした自分への問いは、いつも決まって最後には良い結果を与えてくれるんだ」。理由や目的を明確にし、そのデザインを通して何を伝えるか。基本的ではあるが、難題ともいえる疑問を問い続けた結果、彼のクリエイションに対する想いは毅然たるものとなったのだ。「素晴らしいデザインは、コミュニケーションに富んでいてアイディアをもち、感情を引き出してくれる創造力があるべきだと思う。それから、必ずしもタイムレスなものである必要はないという考えに賛成するよ。デザインは、時代のある一瞬の考えを反映したり、時代とともに消え去ったりして次第にまた興味を生み出していくんだ」。変化していく時代を柔軟に捉えながら、自身のルーツでもある音楽への熱い情熱を糧にデザインの在り方を摸索してきたブライアンは、さらなるデザインへの構想を続けているのだろう。次に我々の視界に入ってくるのは、果たしてどんなデザインなのか。その中に潜むメッセージは一体何なのか、期待とともに熱いまなざしを注ぐ。

  • スライド

    ブライアンと同じくL.A.在住の彫刻家アーロン・カレーの作品集や、写真家でありディレクターとしても活動するデイヴィッド・ブラックによる写真集のデザインも手がける。アーティストの魅力がさらに光る、多種多様なアプローチで施されたデザインが印象的だ。「成功するどんなプロジェクトも、そこには互いのクリエイションに対するリスペクトがある。そして一緒に働くすべての人に対してそう接するべきだと思う。コレボレーション、ディスカッション、探求、これらすべてのことがプロジェクトで重要な要素になってくるんだ」。

  • スライド

    ブライアンと同じくL.A.在住の彫刻家アーロン・カレーの作品集や、写真家でありディレクターとしても活動するデイヴィッド・ブラックによる写真集のデザインも手がける。アーティストの魅力がさらに光る、多種多様なアプローチで施されたデザインが印象的だ。「成功するどんなプロジェクトも、そこには互いのクリエイションに対するリスペクトがある。そして一緒に働くすべての人に対してそう接するべきだと思う。コレボレーション、ディスカッション、探求、これらすべてのことがプロジェクトで重要な要素になってくるんだ」。

PROFILE

Brian Roettinger

L.Aを拠点に活動するグラフィックアーティスト。ジェイ・Z、マリリン・マンソン、デュラン・デュランのアルバムアートやヘルムート ラング、サン ローランにもグラフィックデザインを提供し、グラミー賞の最優秀レコーディングパッケージにノミネートされる。2019年には、盟友であるロックバンド〈ノー・エイジ〉と日本で初となる個展を開催。

Instagam : @brianroettinger

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