既成概念を破壊し
自らのフィールドで

ファッション界において、常にその動向が注視されるヴァージル・アブローが手がける〈オフ-ホワイト™️〉。ルイ ヴィトンのディレクターも務め、モードとストリートを垣根なく行き交う様は、まさに時代の寵児と言える。なぜヴァージルが評価され、これほどまでに引く手数多の存在なのか、今シーズンのクリエイションからも浮かび上がる。まずトピックとしてフューチュラのグラフィティを用いたデザインが目を引くが、単なるコラボではない、彼の思考に迫る奥深さがある。『プラスチック』と題された今回のコレクションは、ファッションシーンを席巻するサスティナビリティに対する彼なりの解釈を示したものと感じられる。本来は便利で有意義な素材として開発されたにも関わらず、今では悪者呼ばわりのプラスチック。コントロールを失い、自制できないのは人間であると、そんな皮肉めいたメッセージにも思える彼のアプローチは、綺麗なシルエットのブレザーをキャンバス代わりに、ストリートにおけるレジェンドの魂が躍動するように、あらゆる垣根や境界について、そして何より物事の本質について再考する機会を与えてくれる。