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CULTURE, INTERVIEW 2020.11.19

CULTURE COLUMN

Interview with Ramdane Touhami about 『WAM』

自分勝手な発想が織りなす
唯一無二の美しい世界

ラムダン・トゥアミは、斬新なアイディアと秀でたプロデュース力を武器に、フランス発の総合美容専門店〈オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー〉をはじめとする多様なクリエイションを手がけるアートディレクター兼実業家である。自身の興味の赴くままに突き進む彼が今回取り組んだのは、『WAM』と題された“EGO CENTRIC MAGAZINE(自己中心的な雑誌)”。親交の深いクリエイターへのインタビューや日常に潜む着想源、自身を主人公にした小説など、 自己を中心に描かれる濃度の高い内容は彼の存在を知らなかった人をも引き込む。自らの手で押し拡げる可能性とクリエイションの軸となる部分を、誌面から、そして彼との対話から読み解いていく。

Photo_Xavier Tera (Portrait,Shop) / Ryo Sato (Book)

独りよがりではない
“自己中心的”な雑誌

「『WAM』は、スラングで“Me/My self”という意味。これは僕自身についての雑誌なんだ」。そう語るラムダンが手がけたボリューミーな雑誌の表紙には、スイスで購入したばかりのホテルと愛車を運転する自分自身の姿。誌面に差し込まれた〈グッチ〉の広告のモデルには自分を起用(1)*。インタビュー特集では、〈オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™〉などを運営するNew Guards Groupの創設者であり〈ヴィンテージ55〉のオーナー、ダビデ・ドゥ・ジーリオ(2)*や高級ヴィンテージカーのコレクター/ディーラーのアルチュール・カー(3)*など、多様な領域で活躍する面々にたっぷりと話を聞いた。その他、無人のルーブル美術館で行われた撮影(4)*や30日間ノンストップのショッピングヒストリー紹介(5)*、パリの街に立ち並ぶ建物の扉のオーナメント(6)*やあちこちに飾られた市の紋章を切り取った企画など。この男だからこそ実現するコンテンツをオリジナルな視点で色づけた誌面は、フォントから使用する紙の種類に至るまで、すべてラムダンのこだわり抜いたクリエイションが反映されている。

(*下記写真参考)

-1「スタイリングは自分でしたんだけど、〈グッチ〉のアイテムはひとつも着用してない。広告なのにね!」皮肉やユーモアが所々に散りばめられた内容に、彼の人柄がうかがえる。

SNSの普及により誰もが簡単に発信をできるようになった世の中で、その流れに逆らうようにあえて労力と時間を要する雑誌という媒体に取り組んだ理由の裏には、彼のクリエイションに対する実直な姿勢があった。「今の時代、Instagramが自己表現の手段だろう?みんな自分の好きなものや見せたいものを編集して投稿する。メディアも同じで、世の中に伝えたいことを媒体を通して発信している。そのようにして、みんなエゴなライフを送っているんだ。それをわかりやすく表現したのがこの雑誌だよ。でも、SNSは情報量が多すぎる。みんな自分で考えることをやめてバカになるよ。10分ごとに、ただ携帯をチェックしているだけではアイディアは何も生まれないだろう?僕は流行やブランド品にまったく興味がないし、そんなことより、スマートでクレイジーで、素敵なクリエイションをしている僕の友人のことや街に溢れたおもしろいモノを表現したいんだ」。ラムダンの思考とスタイルが注ぎ込まれたマガジンは“自己中心的”がコンセプトである一方、読み進めると浮かんでくるのは、My self(ラムダン)という媒体を通して投影される事柄の本質と対象の魅力。トレンドや時代感とは別のものさしで世界を見渡す彼の脳内が映し出された誌面には、確固たるスタイルと独自の視点で解釈されたクリエイションのヒントが、贅沢に詰め込まれている。

過去と現在をつなぐ
好奇心とアイディア

「10代の頃はスケートに夢中で、その延長線上で友人とTシャツブランドをはじめた。学校にもろくに行ってなかったのが親にバレて家を追い出され、1年間ほどホームレス生活を送っていたんだ。ギャングに追われたり、知らない奴に足を刺されたり(!)、本当に大変だったよ」。決して裕福とはいえないタフな環境から、ファッションシーンに飛び込んだラムダン。その頃には、彼の興味の矛先のひとつであった日本をはじめて訪れた。「日本を訪れる度に、クレイジーなパーティーを毎晩したよ。その頃の友人で今もいっしょに働いている人もいる。日本のすべてが好きとは言えないけど、ここには刺激的な人やモノがたくさんある。青山骨董通り店の看板も、合羽橋の食品サンプルから着想を得たんだ。アイディアをスタッフに提案したら最初は『難しい』と言われたけど、できないはずがないと言い返した。僕にできなかったことなんてないからね」。

今年8月にオープンしたオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー青山骨董通り店。街路までタイルが敷き詰められた、築40年の煉瓦造りのビルの一角に位置する路面店は、店内まで煉瓦を引き込み、道行く人々が誘い込まれるような空間。「〈ビュリー〉の店を構えるときに大切にしているのは、場所との調和。リスペクトをもち、その場を生かすようなショップにする。地域に溶け込み人々に親しまれる存在になるように願っているよ」。

LEFT_壁一面にディスプレイされたガラス菅は、人気アイテムのひとつ、ユイル・アンティークを訪れた人々が試すことができるインスタレーション。実用的な道具の造形美をそのまま活かした仕掛けからは、ラムダンの遊び心溢れるアプローチとクラフトマンシップに対するリスペクトが感じられる。
RIGHT_一方、ビューティーカウンターが配された向かいの壁には、真紅のベルベット生地が張り巡らされ、教会のようなクラシックで厳かな趣を纏う。埋め込まれた石膏リレーフは〈ビュリー〉でも取り扱うソープを彷彿させる。

歯に衣着せぬ語調と他人にも自分にも正直に向き合う姿勢。その人柄や過去の背景とは対照的な、繊細に作り込まれた美しいクリエイションや世界を客観的に見渡す冷静さ 。これらの相反する要素を併せもつ彼をつなぎ合わせ突き動かすもの。それは、彼の中に宿る純粋無垢な好奇心ととめどないアイディアであった。「世界が変わるように、僕も日々変化し続けている。昔の僕は今をまったく想像していなかったし、この雑誌をつくったときと今の僕も違う人間だ。インスピレーションも興味があることも毎日変わっていく。先のことなんて誰にもわからない。ただ、僕にはたくさんのアイディアがある。それらがなくなることはないんだ。だからもしホームレスに戻るようなことがあっても、何も心配いらない。僕には、アイディアがあるから」。可能性で溢れた彼の世界は、SNS時代に捧げられたこの雑誌のように堂々と存在感を示す。時代とともに変化し続ける世の中で、その変容を客観的に観察しながら頭の中に描かれた尽きることのないアイディアを形にすることで、これからも我々にまだ見たこのない美しい景色を提示してくれることだろう。

Information

『WAM』

【取り扱い店舗】
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー各店舗/オンライン
www.buly1803.com/jp/



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