NOAH from vol.101
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外部の要素や高いスキルを集めて、ハイクオリティのモノをつくり上げていくことは、一般的な手段のひとつであるし、ブランドやそのクリエイションを生み出していくためにも必要不可欠。だが内部でしか生み出せない仕上がりや雰囲気がある。今回ニューヨークを拠点とする〈ノア〉から届いたエディトリアルは、後者を顕著に表している。彼らのコミュニティの中で撮り下ろされたからこそ滲み出ている、NYの街の空気感と〈ノア〉が何を大事にしているのかを感覚として感じることができるはずだ。
ZEKE
product photographer
L/S T shirt ¥10780, CAP ¥7150, DENIM PANTS ¥29700 / NOAH
CAMILLA
NOAH NY shop employee
T SHIRT ¥9680, PANTS ¥28600 / NOAH
QUINN
NOAH skate team
SHIRT ¥19800 / NOAH
NYの街やそれを取り巻くカルチャーの匂いを、洋服だけでなく取り組みや姿勢など含めたメッセージとして発信している、ニューヨークを拠点にするブランド〈ノア〉。ファッションやストリートブランドという言葉の枠組みに収まることなく、よりブランドの広義の在り方を、体現しようとしているのを感じることができる。〈ノア〉を手掛けるブレンドン・バベンジンは自身のクリエイションを発信しながら、周りの人を巻き込んでいき、彼の作り上げたコミュニティがブランドの周りを取り囲む。「まず第一に私たちのカルチャーのひとつとして、人間は複雑だということを認識する能力が大事になってくる。歴史的にファッションビジネスは人々をカテゴリーに分けようとしていて、とても狭い中で人間を定義しようとしているんだ。ファッション産業は人間は自己中心的だと決めたがり、それがクリエイティビティの一要素としてあるという風にしたがる。要するに小さな箱の中に押し込めようとしているのと何ら変わりないってことさ。それは私たちにとっては狭すぎると感じるし、その考え方には賛同出来ないね。だから私たちは彼らに自分らしくいるべきだと伝えているし、別に自分の興味あるすべてのことを無理にスタイルに落とし込もうとしなくても良いんじゃない?って言ってるよ。誰かに制約されるようなことではないってことなんだ」。あくまで本人の考えを尊重する。当たり前のように思えるかもしれないが、意外にその姿勢を貫き通すのは難しい。だが彼のもとにはさまざまな人が集い、特に若い世代が〈ノア〉のコミュニティに属し、サポートを受けている。「私たちは〈ノア〉の若い人に大きな価値を見出している。年齢や性別問わず皆にとって良い未来であるように、責任ある選択をしていく努力を重ねているんだ。その中でも特に若い子には、積極的に消費者として自覚を持った行動について話そうとしているよ。ビジネスのオーナーなら当たり前の責任だし、積み重ねることで結果的に私たち人間を、地球を守ることにつながるんじゃないかな。だからもし私たち自身が模範となり良い行動や選択をしていけば、私たちのお客さんが影響を受けて同じように変化をしていく。そしてより良い世界を作ることにつながる。未来の世代へ残していけると信じているんだ」。
自身の考えをコミュニティに対して、世代を跨ぎ伝えようとするブレンドン。彼の物事に対する観点や、社会問題との向き合い方には、根底にあるマインドや姿勢が影響し合っている。〈シュプリーム〉のクリエイティブディレクターを務めた経歴は、周知の情報になりつつあるが、キーとなってくるのは彼がリアルなストリートカルチャーの中で人生を歩み、その道が彼の後ろにあるからこそ、ブレンドンの哲学には説得力がある。「今も昔も変わらず、自分のリアルな雰囲気やスタイルを自身の出で立ちに落とし込むことに、ずっと興味があるんだ。私が若い時から最高のイケてるスタイルを持ってる人は、やりたいことに忠実なやつだって明白だったからね。そういった人たちはルールやトレンドを追う必要性がそもそもないし、クリエイティブで、パイオニアになりうるような、アイディア性に富んでいるんだよ。こういう人たちがストリートで何が起こっているのかを、牽引している気がするな。彼らがカルチャーをつくり上げているんだ。彼らのメインインスピレーションは、大体ファッション以外から得ていて、もとの興味の外にある違った事柄が、彼らのスタイルに影響するんだよ」。ストリートカルチャーの魅力は、そのフィールドから別の興味に派生することだ。そうやって自分だけの脈絡を辿っていった先に、オリジナリティやスタイルがあるのではないだろうか。その事実をブレンドンは直に体感しているし、大切なことを彼なりの手段=〈ノア〉を通じて次の世代に伝えようとしているのだ。