ショップからブランドへ

　2006年にカナダの小さな都市エドモントンにて、ダニエルとアーサーの兄弟によって共同設立されたショップ〈ヘイブン〉。当初は彼らが気に入った世界中のブランドをカナダに輸入して紹介するというところからスタートした。オンラインショッピングが台頭する以前は、カナダで国外のブランドを購入することは難しかったのだと、アーサーは言う。「当時主にセレクトしていたのは、日本をはじめとする世界各地の、クラシックかつ機能的、そして高品質なストリートブランドです。そうしたブランドをミックスしたスタイルを提案してきました」。今ではセレクトショップとしての枠を超え、〈ヘイブン〉というブランドとしての在り方が強まっている。「2017年からコンセプトをさらに進化させ、自分たちが求める独自のプロダクト開発をスタートしました。〈ヘイブン〉では、よりモダンで日常生活に溶け込みながらも優れた機能性、フィット感や手触りを追求したプロダクトを開発しています。ローカルの工場と協力して生産を行うことで、高いクオリティを保ち、ファブリックにも力を入れてトレンドに流されない一生モノを生み出そうとしているのです」。ショップとして長年世界中のファッションシーンに身を置いてきたことで培った審美眼を、オリジナルのブランドとしてのクリエイションへと変換する。片手間のモノづくりではなく、名だたるブランドと肩を並べられるように、日々その精度を高めていく。

過酷な自然環境と都市での生活

　「カナダに住むということは、極限状態ともいえる厳しい気候に身を置くということを意味します。東海岸のトロントの冬は、氷点下30度まで下がるような寒さで、夏は日本のように高温多湿な、30度を超える日が多くあるのです。またバンクーバーでは1年のうち半年から9ヶ月は雨が続くように、どちらの都市も世界的に珍しい場所と言えますね。だからこそ、機能的な観点からのプロダクトへのアプローチが、非常に重要になってきます」。おおよそ世界の多くの都市とは異なる特殊な自然環境。そして、そこには都市らしい表情も同居する。こうした自然環境における特色と合わせて、カナダの文化的背景もまたクリエイションへと影響を与える。「インスピレーションとしては、カナダのカルチャーからも影響を受けています。多くの人種が混じり合う国で、多様性にもとてもオープンなのです。こうした価値観が、人々のライフスタイルにも大きく影響しています」。過酷な自然環境と隣り合わせの都市生活、そして混ざり合うカルチャーの多様性。どこかに焦点を絞るのではなく、そのすべてに対応できるようなプロダクトを目指していく。フラットに良いと思える要素を吸収し、自分たちが身を置くカナダの特殊な気候を踏まえて、機能性とも真摯に向き合う。都会的でありながら感じさせる自然の要素。全てを追求した先に、〈ヘイブン〉ならではの立ち位置が確立されるはず。そんな予感を感じさせるブランドに注目してみてはいかがだろうか。