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S-R Tokyo 2.0 S-R Tokyo 2.0

CULTURE, INTERVIEW 2022.6.16

S-R Tokyo 2.0

葵産業 × BOOT BOYZ BIZ

海を越えたオリジナリティの結び付き

6月18、19日の2日間に渡って、NY指折りのレイヴパーティー「Sustain-Release」のサテライトイベント「S-R Tokyo 2.0」が渋谷Contactで開催される。初開催となった『S-R Meets Tokyo』から数えて、2年半ぶりのカムバック。主宰でDJのAurora Halalはじめシーンの最前線で活躍するアーティストが来日し、東京とNYという2つの都市がダンスミュージックで繋がる夜になるのだが、本イベントを端に生まれたもう1つの結び付きが存在する。刺繍を用いて、唯一のオリジナリティを日本から世界に発信する〈葵産業〉と、NYを拠点に社会運動、アート、音楽、映画などからテーマをピックアップし不定期に販売されるブートアイテムは、毎回即完売するなどカルト的な支持を集める〈BOOT BOYZ BIZ〉の海を越えた共演によるマーチャンタイズが実現。画一的な世の中に対する疑問から、それぞれのフィールドで独創性を追求するという両者のモノづくりは、その素性も含め、捉えどころがなく圧倒的にユニーク。多忙のため、各々にメールインタビューという形で、個性が手を取り合ったコラボレーションの経緯や制作について話を聞いた。

Text Shimpei Nakagawa
Special Thanks DJ Healthy
Edit Shuhei Kawada

―〈葵産業〉は刺繍、〈Boot Boyz Biz〉 (以下、〈BBB〉)はブートレグが芯にあります。どのようにしてそう定まったのですか?

A:どこからともなく、自然の流れだったような記憶があります。結果的に刺繍という手段に落ち着きましたが、なにかしら を介して気持ちの伝達を図っていた、そんな初期衝動を抱いていた気がします。

B:〈BBB〉のモノづくりはリサーチによって裏付けされた過去の事象を自分たちの解釈で組み合わせ、今日の我々の考え方の一助になることを目指しているんだ。我々の任務は過去に存在した閃きの断片を引用し、新しい美学や物語を創出することだから、『ブートレグ集団』であると同時に『アンチ・ブートレグ集団』であると言えると思う。

―〈葵産業〉がスタートした2016年当時のインタビューに、STRが「古着屋のネクストレベル的な場所を作りたい」という思いのもと、もともと友達だったKONIDAとKNTを誘ってスタートしたとありました。ほぼ同時期に2015年にシカゴで結成した〈BBB〉ですが、偶然にも「ブートレグをネクストレベルに昇華したい」という思いでスタートしたと聞きました。この共鳴には、当時の時代性が関係していると思いますか?
また2019年の『S-R TOKYO 1.0』に合わせたコラボレーションと今回の2.0でのコラボレーションを経て、異なるフィールドでネクストレベルを目指すお互いに対して、共感できる部分や、共有できる哲学やセンスなどがあれば教えてください。

A:時代性…はじめた時の我々の過ごした時間や経験における今日的感覚と世界との共有に際して、多数派への安心をもつことへの不思議が1つの動機であり関係だったような覚えがあります。
〈BBB〉に対しては、歴史的世界的に既にありふれ過ぎている事柄やものに対して、同じ解釈をしていると感じます。
強要ではなく共有が自由であるというような。

B:2016年というのは間違いなく時代の変わり目だったと思う。〈葵産業〉が恐らくそうであったように、我々は独自性に欠けたものが氾濫していた世の中から脱却し、自らの“ジャンル”を確立することを目指したんだ。それはどの時代においても新しい世代に課される任務だと思う。10代で〈BBB〉をはじめたんだけど、当時はTシャツをZINEとして捉えてつくっていたんだ。ZINEは自己表現をはじめることに適したフォーマットだし、アイデアを収集して整理するのにもぴったりだからね。独りでに存在したアートムーブメントや社会運動、映画、音楽などをTシャツに落とし込んで、より多くの人に知ってもらうことがブートレグTシャツカルチャーに対する〈BBB〉なりのアンサーなんだ。

〈葵産業〉も精神的なものより物質的なものに重きを置く現代において、新たなアイデアを提示することに使命を感じているんじゃないかな?お互いに、職人気質でありながら空想家で、合理的かつ不合理的であることに重きを置いてるように感じていて、それが物語を最も伝える方法になりうると思うんだ。彼らも「どうやったら、見覚えのあるものを真新しくできるのか?」そんな自問自答を毎日繰り返してるはず。機械的な認識を取り払えたときに、新たな考え方やアイデアが訪れるんだ。

―モノづくりを見ると、好きなものやリファレンスが極めて多様であり、同時に独自のアングルから捉えていると感じます。インスピレーションがどこから来るのか教えてください。

A:わからないです。気がつけば吹き込まれているような毎日です。

B:長い年月の中で埋もれてしまったからなのか、専門的すぎるのか、理由はさまざまだけど、豊かな物語ほど隅に追いやられているように感じる。ただ、こういう歴史こそ、感心が向けられることに最もふさわしいはずで。だからプロダクトを通して、人生に応用できる豊かな情報を提供する、というのが〈BBB〉の目的なんだ。

―2019年以前にすでに〈葵産業〉 × 〈BBB〉でのコラボレーションのアイデアはあったと耳にしましたが、1回目のS-R TOKYOに際して生まれた「〈葵産業〉 ×〈BBB〉」に至るまでの経緯を教えていただけますか?お互いの存在を知ったタイミングや、その時の印象も教えてください。

A:2017年に下北沢で開催された『知覚管理 feat. DJ Python 』に行った時に、友達のJRとまさ君を介して、ブライアン(DJ Python)と知り合いました。その後に遊んでいる時に〈BBB〉の話をよくしていたのがきっかけだったと思います。
印象は、BOOTBOYZBIZって名前からもう、パンチラインというか、共感して興味を持った記憶があります。その時からブライアンに「一緒になにかしたら楽しそう」みたいなことを言ってもらったような思い出があります。そこからまさ君に間に入ってもらい、実現への流れが出来たと思います。

B:『S-R TOKYO』を日本に招致しているDJ Healthyことマサのおかげ。本来“不可能”な作品を創る〈葵産業〉と海を越えて繋がれていることは本当に幸運なことで、彼らのモノづくりには勇気づけられるよ。

―前回のコラボレーションアイテムには葵産業によるゆるキャラやBBBの拠点であるNY・ リッジウッドエリアのローカルストアのロゴがあしらわれたTシャツ、前衛映画の数々を世に送り出した伝説の映画会社『日本アート・シアター・ギルド」をあしらったショートスリーブTシャツ、 小津安二郎とHerbert Marshall McLuhanの好きな文言が転写されたロングスリーブシャツなどがありました。まずはお互いに好きなテーマを出し合ってそれを融合させていく、というような作業なのでしょうか?また前回と今回でそのプロセスに変化はありましたか?

A:曖昧な記憶に霧がかかっていて見つけにくいですが、〈BBB〉のテーマと興味を、〈葵産業〉は刺繍的なところとプラスアルファで再現していくというような流れだったような気がします。ゆるキャラはその当時の私達の興味に〈BBB〉がプラスアルファしてくれて。今回は、『Sustain Release』 という主が前提にあっての、という形になったと思います。

B:1.0ではNYと東京それぞれがもつ特性を比較することを目的としていて、お互いが拠点とする都市を調査し、それぞれが影響を受けたものを引用してるんだ。NYと東京を1つにまとめるというよりは、異なる2つのものをユーモアをもって同居させて架空の物語をつくり上げていく感覚で、そのフィーリングを『S-R TOKYO』のイベント会場でも感じてもらえればという想いのもとで製作したよ。互いの文化から学び、垣根をなくし、そこに共通点を見出すというのは、グローバルなコラボレーションでは重要で、それがオンラインではなく現実世界で実現できたことによって、新たな可能性を感じることができた。

―コラボが実現したのがS-R TOKYOだったこと含め、ともにダンスミュージックシーンに深い関わりがあると思います。シーンに関わるようになったきっかけと魅力について教えてください。

A:自分は、渋谷KOARAでずっとやっていた『Water Works』と、そこから生まれた『Procare』というパーティの流れでの関わりがきっかけです。気持ちいいハウス(Deep houseあたり)がかかるKOARAはとても気持ちよくて。TikiniとKoko Miyagiと、Miami周辺とかかけながら、朝方になるにつれてhouseで気持ちよくなってました。うるさくなくて、少しずつ増えていって、また減って…みたいな駆け引きこそ「これぞ大人か」みたいなテンションでしたかね笑。無駄にいらん! みたいな。充分だあ、みたいな。Street house とか Penpen house とかって。そのちょっと、ぽけっとしてた俺らに石黒さん(1-DRINK)がJRをつれて来てくれて、Technoをぶち込まれるみたいな衝撃を覚えています。 好きな感じのハウスも織り交ぜながら。

B:クラブは今現在を知ることができる場所。絶えず変化を続け、多様性に富んでいて、法的拘束力がなく、可能性に満ち溢れている、そんな異質なスペースは日常空間も本来そうであるべきだと気づかせてくれる。何が自分たちに活力を与えてくれ、何が自分たちを突き動かすのか、そういうことに着目すべきだと思うんだ。


―モノづくりにおいて、ダンスミュージックがもつ文化的側面や精神性から影響を受けることはありますか?もしそうであれば、それがどのように反映されているのでしょうか?

A:いろいろとあると思います。例えば、地域性だったり、同じ暗い場所で会うということだったり。友達同士似通るギャングな感じ、みんな同じ服着てるみたいな。いいすねえ。

B:音楽は視覚的にたとえられるもので、洋服にだってスピード感、音色、リズムを感じ取ることができる。派手なグラフィックからはヒット曲を連想させられるし、良いTシャツと気持ちの良いミックスには共通点があるようにね。

―きたる6月18日と19日、約2年半ぶり2回目のS-R TOKYOがContactにて開催されます。今回もオフィシャルマーチとして〈葵産業〉×〈BBB〉のコラボが実現しましたが、テーマやこだわった部分を教えてください。

A:Sustain Release という前提のもとに、日本とアメリカ、東京とNYC というところがテーマかと思います。仕事じゃないし、普段は離れてる友達と楽しく遊ぶ為に。

B:今回も1回目のコラボレーションとその精神性は変わらないけど、制作のプロセスが違ったね。メール・アート(※1)的プロジェクトというか、長距離での優美な屍骸(※2)の手法に近いというか。会場である渋谷Contactの洞窟感のある3つのフロアーを視覚化することをテーマに、まずは俺たちが好きなようにシルクでプリントしたものを東京に送って、〈葵産業〉に自由に刺繍を乗せてもらったんだ。このグラフィックによる対談とも言えるよね。NYからこんにちは。

(※1 源流はネオ・ダダやフルクサスなどの前衛的な美術運動にあり、「郵便アート(postal art)」、「文通アート(correspondence art)」とも呼ばれる。それまで美術関係者同士で行なわれていた手紙や葉書による展覧会案内状の郵送という慣例が、作品それ自体やそれに類するものを郵便物として送るという芸術表現の手法として取り入れられたものの総称。絵画、コラージュ 、写真、オブジェ、詩、散文などさまざまな種類の表現がある)
(※2 シュルレアリスムにおける作品の共同制作の手法で、複数の人間が互いに他の人間がどのようなものを制作しているかを知ることなしに自分のパートだけを制作するというもの。 文章、詩、絵画などでおこなわれる)

―お互いが拠点としている場所には、どんなイメージをもっていますか?似ているところや、異なるところなどもお聞きしたいです。

A:自分はNY行ったことないので本当にイメージ!シリアスでタイトかつ激しさと緩み全部感じれそうです。共通していそうなのは、大都市ならではのまとまらなさ、悔しさ、ネズミ、蟻。でもそれぞれ違った緊張感がある気がします。

B:前回の『S-R TOKYO』では1週間のみの滞在だったけど、都市という観点でNYと比べて、広範囲で統合されていて、こういう都市形状は人々の意識やものの捉え方に分かりやすく影響を与えると思うんだ。文化がいろいろな場所に点在していて中央主権的でないということはいいことだと思うし、NYも少しずつだけどそうなってきてるように感じる。

―つくってみたいモノや企画したいイベントなど、今後やりたいことは何ですか?

A:友達達とフェス。刺繍を制して、もっと現代的な発表。

B:無回答

―明るい未来が待ち受けている若者たちへ、なにかメッセージをいただけますか?自分たちと同じようにモノをつくっている彼等に向けてのアドバイスでもいいです。

A:Tokyo was not built in a day.

Japan was not built in a day.

喜怒哀楽。

B:1.世の無常を受け入れ、柔軟に絶え間ない学びと創出を。2.ある程度の大胆さをもって作品を送り出すこと。3.自分の心に訴えかけるものを表現し、友情や人との繋がりというのは新しいアイデアが生まれる土壌であるため、全てのプロジェクトにおいて集団であるべき。4.この世に存在するもの全てに対して、情け容赦ない批評を持つこと。5.「自分のすべきことは?」と常々自分を見つめ、自問を怠るな。6.そして自分の喜びにシンプルに従うこと。

タイトル:Sustain-Release presents “S-R Tokyo 2.0”
日程:2022年6月18日(土)
開場/開始:10:00pm〜6:00am
料金:
DOOR ¥4,500 / W/F ¥4,000 / GH S MEMBERS ¥4,000 / ADV ¥3,250 / BEFORE 11pm ¥2,500 / UNDER 23 ¥2,500

2022年6月19日(日)
開場/開始:4:00pm〜11:00pm
料金:
DOOR ¥3,000 / W/F ¥2,500 / GH S MEMBERS ¥2,500 / ADV ¥2,250 / BEFORE 5pm ¥2,000 / UNDER 23 ¥2,000

前売り券:18日一日券 ¥3,250 / 19日一日券 ¥2,250 / 二日通し券 ¥5,000
詳細リンク:(https://www.contacttokyo.com/schedule/sr-tokyo-2-0/),
(https://www.contacttokyo.com/schedule/srtokyo-2-0-0619/)
前売りリンク:RA: (https://ra.co/events/1527866), (https://ra.co/events/1527868)
Zaiko:6/18 (https://contacttokyo.zaiko.io/item/348126)
6/19(https://contacttokyo.zaiko.io/item/348129)
2日通し券(https://contacttokyo.zaiko.io/item/348130)

LINE-UP:
6月18日(土)Contact STUDIO X:
Aurora Halal(NY)
Huerco S.(KC)
食品まつり a.k.a Foodman(LIVE)
Lil Mofo

CONTACT:
Kush Jones(NY)YELLOWUHURU
DJ Trystero
Kotsu

FOYER:
Hibi Bliss
suimin
K-yam
Loci + sudden star T5UMUT5UMU

6月19日(日)Contact
STUDIO X:
Hashman Deejay & PLO Man(VBC / BE)

CONTACT:
Mari Sakurai
ASYL
DJ Healthy

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