GRIND FEATURE TOPIC 『GAME CHANGER』
POP TRADING COMPANY × MINOTAUR INST.
カルチャーへの敬意が
日常着に価値を宿す
世界が慌ただしく動いている。今までの方法が通用しない、考え方を変えなくてはいけない。今月は、従来の流れを打破するクリエイションやインスピレーションを与えてくれる人々「GAME CHANGER」の思考に迫る。
第一弾は2018年に続き2度目のコラボレーションをローンチした、〈ミノトール〉と〈ポップ トレーディングカンパニー〉。それぞれのプロダクトを一見しても、単純な見栄えから共通点は見出しづらいかもしれない。しかし2つのブランドの背景や、クリエイションへの姿勢を紐解いていけば、彼らが手を組むことの意味合いがくっきりと浮かび上がる。互いへのリスペクト、カルチャーへの愛。〈ミノトール〉のデザイナーである泉栄一氏、〈ポップ トレーディングカンパニー〉のピーター・コークスの視点を通して、この先のストリートウエアの在り方を考える。
スケートボードとアパレル
その枠を超えて
Photo_Hugo Snelooper
アムステルダムを拠点に活動するスケートボードカンパニーである〈ポップ トレーディングカンパニー〉は、クラシックな空気感を高い品質で、今の時代での表現として成立させている。単なるノスタルジックを誘う過去の焼き直しではなく、インスピレーションと自分たちの熱意やこだわり、そして解釈を加えていくからこそ、ポップらしいオリジナリティが付加される。「ルーツはもちろんスケートボードですが、私たちの興味はその範疇を超えています。スケートボードとアパレルについて、より深く考えるようにしているのです。また、コレクション、コンテンツ、アムステルダムのショップ、顧客とのやりとりなど全てにおいて、私たち、そして所属するスケーターの個性が落とし込まれています」。スケートボードカンパニーのアイテムのディストリビューターとして活動をはじめた彼らがブランドとして動き出すのは、自然な流れだった。「約8年前、ポップをはじめたときは、文字通りポップアップ形式で取引を行っていました。当初からフィルミング、プロモーションなど自力で行えるスケートチームで、アイデンティティはすでに確立されていたので、あとはプロダクトを作るだけでした。複数の人から勧められたこともあり、"やっちまえ"とパートナーのリックとともに、16AWシーズンからスタートしたのです」。土台にあるアイデンティティが個性を際立たせる。そしてこのアイデンティティは、〈ミノトール〉との2度目のコラボレーションを紐解くうえでも重要な役割を果たす。
Photo_Hugo Snelooper
互いを機能させる
フラットな関係性
第1弾に引き続き、2度目の今回も完成したプロダクトの数々は、両者の個性を引き出し合いつつ、まとまりを見せる。コラボレーションというよりは、ひとつのブランドとして見えるような、馴染みの良さや自然な佇まいは、お互いのコラボレーションへの考え方が影響を与えている。泉氏「コラボレーションとは、規模、世代、ジャンルを超えた、フレンドシップに則って築かれるフラットな関係だと思っています。」ピーター「コラボレーションはとても興味深いものです。自分のブランドをうまく機能させ、相手に自分たちの伝えたいメッセージを届ける。相手も同じ考えでなければいけません。その時に初めて普段は作れないような面白いものを作ることができるのです」。ブランド同士でコミュニケーションを取り、擦り合わせ、磨き上げていく。その先にあるのが単体では為し得なかったような、驚きを与えるプロダクト。〈ミノトール〉はポーターやリーバイス、ステューシーなど、〈ポップ トレーディングカンパニー〉はヴァンズやカンペール、カーハート WIPなど互いに名だたるブランドとの共演も果たしてきた。共通する部分、補い合える部分。共演によって両者の強みが引き出されるというのは、コラボレーションのあるべき姿だという本質に改めて気付かせてくれる。泉氏「国籍は違いますが、幼少年期からスケートやファッションを通じて育ってきているので、デザイン的価値観の共有はスムーズです。私たちに共通するのは、過去へのカルチャーへの敬意と、本質をこれからの時代も感じ伝えていきたいという点ですね」。〈ミノトール〉と〈ポップ トレーディング カンパニー〉。それぞれのクリエイションはジャンルとしては異なれど、根底にあるカルチャーとそこに対する深い愛情でつながりを見せている。その背景や共通認識こそが、違和感なく混ざり合い、新たなプロダクトを生み出すことを可能にする。
(左)両者のロゴを調和させ、統一感あるデザインにまとめあげた。(中)UVガードや速乾性など、日々タフに使ううえで欠かせない機能が生地に込められている。(右)MTRGYMと呼ばれるミノトールオリジナルの生地は、春夏の気象条件に最適で、スケートボードやその他野外でのアクティビティにおいて最適なパフォーマンスを提供してくれる。
それぞれのアイテムはもちろん、何より今回のコラボレーションで目玉となるのムービーだろう。「我々のブランドの親友でもある、パトリック・ルワースがディレクターを務めてくれました。彼はこのコレクションが私たちにとってどのような意味があるかを、とても良く表現してくれました。エイリアンやスペース オデッセイのような地球上のものではないタイプですね。追われていた男たちが宇宙船に囚われたような、気になる展開であり非現実的な雰囲気のストーリー」。
「ディレクターのパトリック、そしてスモールギャングスタジオによって、脚本の作成、ミニチュアを使用した作業、撮影と編集など何週間もの作業が行われました。このプロジェクトの職人技と情熱には非常に誇りを感じています」。スケッチで表現されるイメージを、精巧なミニチュアを使用して、動画で表現する。洋服とフィールドは異なるが、クオリティへのこだわりを象徴する素晴らしい動画が完成した。
時代の分岐点を
切り抜けるヒント
コラボレーションにおける両者の考え方について触れることで見えてきたのは、コラボそのものについての価値観や、カルチャーとの深い関係性。図らずも2020年に分岐点を迎えることになったファッションやカルチャーにおいて、両者はこの先の景色を見るためのヒントを提示してくれそうだ。ピーター「幼い頃から、スケートボードというストリートカルチャーで育ち、スニーカーやアパレルにハマり、大人になるにつれてメンズウエアを熟知していくというのは私たちにとって自然な流れです。しかし今の時代の人々は、より深く考えられ、タイムレスで確かなクオリティがあるものを欲しています。カルチャーの発展とは、歳をとるにつれて好みやテイストが変わっていくように、ひとつの世代のようなものなのです」。自らが経験してきたカルチャーと周辺にある物事。時代が移り変われど、核となる部分は変わらずに表現する過程で新たなアプローチが求められている。泉氏「今までファッションやカルチャーから学んだ大切なことを吸収しながらも、今までにないシーンをみんなで楽しみながら、創って行きたいです。今までと変わらず、経験したことのない新たな体験へチャレンジしていきます」。カルチャーへの愛と機能性や品質といったクオリティ。この2つが軸として機能する両ブランドは、ストーリーあるクリエイションでこの先も私たちを楽しませてくれるはずだ。
PROFILE
POP TRADING COMPANY × MINOTAUR INST.
POP TRADING COMPANY
オランダのアムステルダムを拠点に活動するスケートボードカンパニー。クラシックなデザインと生産背景などにこだわったクオリティが特徴。名だたるブランドとのコラボの影響もあって、日本においても徐々に広く認知されはじめている。
https://poptradingcompany.com
Instagram@poptradingcompany
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MINOTAUR INST.
福岡の老舗セレクトショップでバイヤーを務めた泉栄一氏が2004年に立ち上げたブランド。『心身ともに快適なプロダクト』をコンセプトのひとつとして、時代に適応できるプロダクトを手がける。自身を形成してきたストリートカルチャーや音楽への深い敬意が随所に散りばめられる。
https://minotaur.co.jp/
Instagram@minotaur_inst._official