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POP TRADING COMPANY from vol.102 POP TRADING COMPANY from vol.102

CULTURE, INTERVIEW 2021.4.13

POP TRADING COMPANY from vol.102

With Contrasts

オランダ・アムステルダムを拠点とするスケートカンパニー、〈ポップ トレーディングカンパニー〉。確かなクオリティを有したプロダクトや、名だたるブランドとのコラボレーションによってその存在感を年々強めている。まだまだ謎に包まれている彼らについて深く知るには、“コントラスト”というワードが鍵となりそうだ。そもそもの成り立ちについて、プロダクトについて、メンバーやショップについて、ブランドの創設者であるピーター・コークスの話を通して、あらゆる角度から掘り下げる。

Photo Eva Roefs, Hugo Snelooper
Translation Shiori Nii 
Edit&Text Shuhei Kawada

Photo Eva Roefs

プラットフォームとしての在り方

 オランダ・アムステルダムという、ファッションやカルチャーの中心地とは呼べない街から、今ではスケート、ファッションの両シーンにおいて存在感を増している〈ポップ トレーディングカンパニー〉。その成り立ちからこの都市での活動まで見渡すと、単なるブランドやスケートカンパニーという枠を超えた彼らの在り方が見えてくる。「昔オランダ東部のfriscoというショップで働いていた時、現在でもブランドを一緒に運営している共同設立者のリック・ファン・レストと出会った。その数年後、ヨーロッパのスケートブランドがマーケットでうまく表現されていないように感じて、彼らのディストリビューターとしてのビジネスをスタートした。最初はベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの総称)におけるスケートブランドの代理店、すなわちトレーディングカンパニーとしてはじまり、2016AWシーズンからオリジナルのアパレルブランドとして展開している」。ブランドとしての立ち上げこそ最近ではあるがそれまで培ってきた、スケートシーンとの関係性やファッションに対する見識は彼らの自由な動きを可能にする要素として機能している。またヨーロッパの中心に位置しているという地理的な環境もあってか、常にシーンの動向は捉えつつも、いわゆるカルチャーの中心地とは異なる場所にいることで、独自の在り方が形成されている。「アムステルダムはとても大きく、かつ小さな都市という感じかな。インターナショナルで、世界中からたくさんの移住者がいるし、ここをベースにしている大きな法人も多い。さまざまな視点を与えてくれる場所だと言えるね。ヨーロッパの中心に位置してるからアクセスが良いし、パンデミック前の話ではあるけど、レストランや美術館、音楽やクラブシーンも盛えている。ここ数年でスケートシーンもかなり成長してきていて、新しくNOORDというスケートパークもできたんだ。僕たちはアムステルダムのシーンにもっと関わっていきたい。だからスケーターをサポートするし、イベントをオーガナイズすることもあれば、スケートセッションも開催する。都市とともに語りかけることで、スケーターにもっとスペースをつくり上げていきたいと思っているよ」。制約に縛られないのはクリエイションにおいてだけではなく、その在り方についても同様だ。単なるブランドやスケートカンパニーという枠を超えて、〈ポップ トレーディングカンパニー〉というプラットフォームとして、着実に歩みを進めはじめている。

  • スライド

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「さまざまな視点を与えてくれる」とピーターが言うアムステルダム。今では20人ほどのメンバーを抱えるスケートチームだが、ストリートでのスケートを楽しむだけでなく、スケートを通して地元のシーンを盛り上げようとしている。また彼らが頻繁にアップするモノクロ写真やビデオは、全体の世界観に通ずる“コントラスト”の概念を反映している。

コントラストで遊ぶカルチャーと服

 レトロな雰囲気を漂わせつつ、古臭く映らないプロダクトの数々。上質な生地、機能性に配慮したディテール。時折ローンチされる、驚くようなコラボレーション。モノクロがメインでリリースされるスケートビデオ。〈ポップトレーディングカンパニー〉ではそれぞれのアウトプットにおいて一貫したスタイルがある。多くのスケートカンパニーとは異なる視点をもっているように思えるが、その真意はいかに。「僕らは2つの世界の隅の方で、2つがクロスオーバーするのを見ているよ。スケートが好きだし、それと同じように美しく洗練された洋服も好きなんだ。美的な観点で見れば、どちらかというとメンズウエアというくくりなのかもしれないけど、ルーツがスケートボードにあるという本質は変わらないね。デザインは昔のスケートブランドのアイテムから着想を得ているし、映像や写真についても落とし込まれているよ。ブランドについて僕らの心に最初に思い浮かぶのがスケートだけど、どちらも試してみるのもいいんじゃないかって感じているんだ。僕らにとってスケートは知りすぎていて、当たり前のことになっているから、他のテリトリーに入って遊んでみても、自分たちの本質やコミュニティを失わないでいられるんだ」。根底に染み付いたスケートカルチャーは、意識せずともプロダクトに影響を与える。それゆえに、よりファッションとしての視点を加えたアプローチをすることで、オリジナリティが形成されたのだ。ルーツとなるのは、ピーター自身が体感してきた90年代のスケートシーンの空気。そしてそこに加わるメンズウエアへの関心や経験。スケートカルチャーとメンズウエアという2つの要素だけでなく、過去と今が程よく対比されることで、懐かしさと新しさを共存させている。「昔スケートショップで働いていた時に、ほとんどのブランドが似たようなファブリックを使用して、同じような品質、カッティングだと気づいたんだ。僕らのプロダクトを見て触れたらわかると思うけど、品質には明らかにこだわっているよ。また着心地ということはもちろん、スケートや他のアクティビティに対する機能性も当然大切だ。僕らはメンズウエアとスケートブランドの絶妙なバランスを取るようにしている。だからこそハリスツイードのプルオーバージャケットがあれば、ナイロンのスーツジャケットもある。そこにルールはないんだよ。僕らのブランドとしてのベストなクオリティを提案しようとしているのさ」。スケートボードとファッション。近いようで混ざりにくいこの2つを、境目なく行き来し、その対比を楽しみながら形にしていく。

“飾り窓地区”に構える〈ポップ トレーディングカンパニー〉の旗艦店。ギャラリーのような無機質な内装に並ぶ彼のプロダクトが、良いアクセントとなり独特な空気感をつくり上げる。また過去に手がけたシーズンのビジュアルやコラージュが張りめぐらされたスペースも。店前には、時に彼らのメンバーが溜まりコミュニケーションのスペースとしても機能する。中央でキャップを被っているのが、〈ポップ トレーディングカンパニー〉の設立者である、ピーター・コークス。彼の左に立っているのが、共同設立者のリック・ファン・レスト。

ブランドの“家”を特異な場所で

 〈ポップ トレーディングカンパニー〉は拠点となるアムステルダム近辺に、旗艦店を構えている。消費者とブランドを繋ぐ場所であり、チームのメンバーが溜まって時間を過ごす場合もある。いわばコミュニケーションツールともいえるようなこのショップは“飾り窓地区”という特異なロケーションに面している。「アムステルダムの近所だし、この場所にストアを出せたことはラッキーだよ。ハイエンドとローエンド、ファッションとスケートボードのようなコントラストで遊ぶのが好きなのと同様に、スケートボードブランドだと予想できない、ギャラリーのようなクリーンなムードのストアを、ヤバい地域につくるということ、そして窓の後ろにいる女性を横目に通り過ぎると、何人かのスケーターがたむろしている洗練されたストアがあるという極端な光景がとても面白いと思ってね」。いわゆる合法的な性産業エリアである“飾り窓地区”。夜には赤いネオンが輝く妖艶なエリアの一角にショップを構えている。ここにもコントラストという概念が色濃く反映されており、その遊び心の幅の広さがうかがえる。「もともとはブランドをサポートするためのマーケティングとしてはじめたけど、とても良い仕上がりになったね。パンデミックによるロックダウンのせいで1 年のほとんどを閉めておかなくてはいけなかったけど、理想では4月頃には再度オープンして、僕らのコミュニティが集まったり、最新のコレクションやコラボレーションを面白い形式でプレゼンテーションする場所にしたいと考えているんだ。毎月新たなドロップのたびにストアの中も変えるようにしていて、それをみんな気に入ってくれているみたいだね。ショップは僕らが何者かを伝える重要なパート。デザインからここで働くクルー、流しているビデオや音楽、香りなどすべてが結合したものが〈ポップ トレーディングカンパニー〉をつくり上げるんだ。キッズがここに集まってスケートに出かけるかもしれないし、ローンチイベントで仲間と一緒に酔っ払っているかもしれない。ショップはいわばブランドにとっての“家”といえるだろう」。アウトプットのそれぞれにコントラストを加え、自分たちが楽しむと同時に、引き寄せられた多くの人々を魅了していく。今はまだ海を渡ってショップに足を運べる時期ではないが、〈ポップトレーディングカンパニー〉というプラットフォームはあらゆる角度に開かれている。ぜひ一度その世界観にアクセスしてみてはいかがだろうか。

PROFILE

POP TRADING COMPANY

ヨーロッパを中心としたスケートカンパニーのディストリビューターとして活動がスタート。2016AWより、ブランドとしてオリジナルのプロダクトを展開。4月上旬には2度目となるミッフィーとのコラボレーションが控えている。

https://poptradingcompany.com/

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