GRIND

INTERVIEW, MAGAZINE 2020.4.29

the Force

COMOLI

自分に合うモノを

コモリの洋服の佇まいの美しさは、洋服に対する深い知朧を持たなくても、感覚で掴み取ることができるはず。アイテムの数々は、強い主張を視覚的に訴えかけることはしない。それでも不思議とニュアンスを感じ取り、引き寄せられる人が多くいる。デザイナーである小森啓二郎さんの歩みと直接的にリンクする。ブランドの歩みを見ていくと、ファッションにおいて自分の軸を持つことの大切さに気づかせてくれる。
※こちらはGRIND Vol.96に掲載した記事です。

Photo_YOKO TAGAWA
    KAZUOKI YASUGI (item)

自分が何を着たいか

ブランドの立ち上げから7年を経過するブランド、コモリ。美しいと感覚的に思わせる、余裕のある曲線的なシルエット。上質であり、スタンダードのようでありながら、枠に収まらない立ち位置を確保している。当初から変わらないモノづくりへの想いはそのままに、年数の経過ともに生じる変化を受け入れながらブランドの歩みは進んでいく。「もともとアパレル企業内でデザイナーをやっていたんです。自分がいいと思う服を提案してもなかなか採用されず、作っても売れなかったんです。次第に自分でも着たい物でもないし、売れないし誰のために作ってるのかって、溜まりに溜まって自分の篇たいと思う服を作ったのがはじまりです。最初は8型くらいのコレクションだったんですけど」。自分が着たいと思う洋服へのこだわりが、コモリのスタート地点であり今も根幹を成している部分である。「当時はタイトフィットなものしかなくて、自分は緩い服が好きだったんです90年代半ば、高校生くらいの時にしていた格好を、今のスペックで再現するというか、言ってしまえばルーズフィットです」。時代の変遷とともに、シルエットももれなく流行に左右される要素だが、時代感ではなく自分が持つ揺るぎない感覚を再現していく姿勢は今も変わらず続いている。だからこそ、緩やかなシルエットのアイテムにも強い意志が感じられ、多くの人を惹きつける。

  • スライド

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    定番で展開されるバンドカラーシャツ。コモリを象徴するアイテムのひとつ。今シーズン展開されるシープスキンジャケット。

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    ラペンハムとの別注コート。以前のシーズンにはなかったポケット部分に補強を加えた仕様。

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    秋冬シーズンの定番で展開されるクルーネックニット。今シーズンはカシミヤと和紙で作られており、上質な肌触りを実現。

デザイナーである小森啓二郎さん。

従来と異なる視点

自身が鶉たい服をペースにクリエイションを続けているが、当初より服の型数も増え、立ち上げ当初になかった視点も加わるようになってきている。「自分で着たいペースで服を作っていると、そもそもいろんな格好をしたいわけじゃないし、色柄も瞑られてしまいます。でも去年と同じものじゃ飽きてしまうので、新しい服を作る時には少しずつ変えたりしています。加えて自分で着てみたいとか、自分じゃない人物像をあげて着て欲しいみたいな欲も出てきたので、広がってきているのかもしれません」。シーズンの中で定番もあれば、前シーズンと同じアイテムを生地を変えて作ったり、ディテールに変化を加五ていく。大きな変化を必要としないのは、すべてが自分の軸の廷長線上にあるからなのだろう。「服を作る以外やることがないので、これで食っていきたいんですよね、人生。自分が着たいと思えるものを作れているか、自分でちゃんといいなと思えているかが1番重要で、もちろん人の意見も気になりますが、自分の目だけ信じていれば別にいいかなって。自分の名前を冠したブランドですし、死ぬまでやりたいって思った時に、どうやり続けられるのかなって思っているんですけど、自分が飽きてしまったらできないんです。欲求を絶やさないようにというのは意識しています。やはり欲求がなくなってしまうと、あのブランド気持ち入ってないなって感じてしまうと思うので」。“自分”というワードは閉鎖的な意味合いを持つのではなく、小森さんにとっては、“自分”と深く向き合うことが、結果としてクリエイションを経て違う誰かを魅了していく。確固たる自己を追求した先には、新たな欲求や好奇心との出会いが待っているのかもしれないが、自分が何を好きで何を選びたいかということまで、しっかりと把握できている人は少ないだろう。

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    アトリエ内の生地サンプルの一部。上質なモノづくりのいわばスタート地点。

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    アトリエ内のサンプルや、インスピレーションのひとつでもある古着が並ぶ様子。

いいものとは何か

コモリの洋服は、上質な生地を使い縫製など細部へのこだわりも欠かさないのだが、そうしたアプローチの根底には小森さん自身のいいモノに対する価値観が反映されている。「着心地がいい服が着たいから、自然と素材にもこだわるし縫製にもこだわるっていう順番です。古着が好きなので、何十年後かにそういう服になっていたいし、そうなるためにはどうすればいいかっていうのを逆算して作っています。断言はできないですが、こう作れば思い描いていた雰囲気の服になるんじゃないかなって、その際に今残っている昔の服を見ると、やっばりいい原料を使っているんです。丁寧に作られていて、原料も良い。そうなると必然的にいい原料を使おうってところからはじまりますよね」。今の時代に残る、自身の感性に響く服を紐解いていくことで見えてきた共通点。そして目指すべきポイントととして設定するとともに、そこから逆算して過程を導いていく。論理的にも思えるプロセスを踏んでいるが、同時に感覚的な要素も大きな影響を与えている。「古薦もインスピレーションではありますが、やはり人ですね。すごく無意識に服を鷲ている人を一瞬見たときのかっこよさから持ってくることが多いです。キメている人というよりかは偶然かっこよくなってしまっている人、無意識に無頓着に着ている人と言うか。ディテールまで見えているわけではないので、色味や雰囲気を参考にして、自分だったらこんな形にするとか、かっこつけた言い方になってしまいますが、良いなと思ったものを残像でもいいので残したいんです」。先にも“自分の目だけ信じていればいい”という言葉があったが、それは決して自己中心的なネガティブな意味合いを持つのではなく、嘘偽りないクリエイションに向かうための、絶対的な指標となる武器なのだ。その武器をもとにして生み出されるアイテムが、結果として同じ感覚の人々を吸い寄せるように、各々が好きなモノや感覚をもっと素直にさらけ出す必要があるのかもしれない。ひとりひとりに過剰なほどに用意されたモノや情報に惑わされず、単純に自分は何が好きかという根本を見つめ直す。そして自由に表現していく。本来ファッションの楽しみ方がそうであるよう。

9月14日、南青山にオープンするコモリの旗艦店の様子。店内の詳細は事前に明らかにされないが、19AWシーズンのルックでは、店内およびその周辺で撮影が行われ、店内の一部を収めたカットも収録されている。コンクリートの質感や窓から覗く緑、すべてがコモリのイメージとマッチするように感じられる。©︎COMOLI

PROFILE

COMOLI

住所:東京都港区南青山6-1-3 COLLEZIONE Bldg.2F
TEL:03-5962-7089



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