アートに吹き込む息吹

“日常生活のための美しい服をデザインする”という信念を掲げコレクションを展開する〈ルメール〉。考え抜かれたパターンによるシルエットや、高品質な素材を組み合わせたプロダクトは、パリジェンヌ／パリジャンのファッションに対する哲学を引き継ぎ、現代的に品良く落とし込まれ、コレクションが完成されている。前述の仕立ての美しさもさることながら、前シーズンから継続されたメキシコ人フォークアーティスト、マルティン・ラミレスのドローイング作品を反映させたカプセルコレクションは、〈ルメール〉が感じている“今”が、洋服を通じて素直に表現されたものとなった。アウトサイダー・アートの画家として評されるラミレスの一生は、移住、搾取、隔離など困難の連続のなかにあったとされており、彼の激動の人生が鮮明に描かれたドローイングが特徴。その作風を誰もが自由と変化を求めている、今という時代の空気感と共鳴するものだと〈ルメール〉は捉え、洋服全体をキャンバスと見立てながらブランドのメッセージとして施した。ファブリックのサイズに合わせて原画を忠実に配置しており、身に纏う人の身体の動きに合わせて動き出すドローイングは、アートや思想をファッションで体現する在り方を、より身近に感じさせる。¥127000