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MONTHLY / IN THE TOWN MONTHLY / IN THE TOWN

CULTURE, INTERVIEW 2021.1.23

MONTHLY / IN THE TOWN

Sneakersnstuff Tokyo

カテゴリーを超えた
有機的な東京像

街の中から何かを発信していく場所。その場所で得ることができる、新たな出会いやクリエイティブに生きていくためのインスピレーションを探る当連載。代官山の閑静な街並みに店舗を構えた、スウェーデン発祥のスニーカーショップ〈スニーカーズエンスタッフ〉(以下、SNS)。昨年には、同じ場所にブランド初の試みとしてSNS CAFE TOKYOをオープン。スニーカーリテーラーが、型にはまることなく多角的な仕掛けを施しながら押しひろげていくコミュニティとその場所に宿るメッセージとは。創業者/共同経営者のひとり、エリック・ファーガリンドに話を聞いた。

Photo Ryo Sato
Movie Kei Doguchi
Edit Shiori Nii

単なる店ではない
“人間”のような在り方

1999年、熱狂的なスニーカーギークであったエリック・ファーガリンドとペーター・ヤンソンがスニーカーを通して出会い、意気投合し設立された〈SNS〉。オリジナルな彩りを加えたコラボレーションや、視覚に訴えかける内装などで他のスニーカーショップと一線を画し、現在は拠点とするストックホルムに加え世界の主要7都市に店舗を構える。そしてそれらを生みだすために大きな役割をはたすのが、スニーカーのみに固執することなく、周囲を取り囲むさまざまなもの(stuff)から発信される表現にある。
 「僕らは〈SNS〉をひとりの人間だと考えているんだ。スニーカーギークでいつもいいスニーカーを履いていて、レストランやバーに行ったり、映画館での映画鑑賞やレコードで音楽を聴くのが好きな、社交的な人。そんなユニークで刺激的な存在を、クリエイションを通してつくりあげている感じだ。もちろんスニーカーが〈SNS〉の心臓部分であるのは事実だけれど、僕らはスニーカーが好きなのと同様に、バーやレストランで人と出会ったり、音楽を楽しんだり、さまざまな都市に旅に出て異文化を体験することも好きだ。そしてそのような時間からインスピレーションを受ける。世界中がデジタルの方向に向かい、家でなんでも済む時代だけど、昨年のパンデミックは家からまったく出ないことがどんなにクレイジーかを教えてくれた。感動や感性を失い、人々は落ち込んでしまうんだ。だから僕らは非効率的だと分かっていても、フィジカルなものに大きく投資して、五感を刺激するリアルな体験を提供したいんだ」。
 彼らの根底にある〈SNS〉という人間が好奇心のままに構築していく個性は、ジャンルをまたいだフィジカルな表現へと落としこまれる。NYのSNS BAR、ベルリンのイベントスペースに続いてオープンしたSNS CAFE TOKYOでは、世界各地の料理やルーツである北欧のムードを感じさせるインテリアなど、多国的な要素が混在。〈SNS〉のリアルな体温が感じられるこの場所に足を運べば、幅広い人々やカルチャーがクロスオーバーしながら突発的な出会いを生みだすエネルギーを、感じることができるだろう。

Sneakersnstuffと東京発の人気コーヒーショップCamelbackとのパートナーシップを経て実現した本格的なカフェメニューも充実。どこを切り取っても、スニーカショップに付随したものではなく、カフェ単体として秀でた高品質なサービスと空間を体感できる。

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    鮮やかなイエローのタイルが敷き詰められたバスルームには、エリックが住むストックホルムの駅の電車の音をBGMとして流す。「代官山駅周辺は、10年前に初めて日本を訪れた時からずっとお気に入りの場所。線路沿いという共通点から、僕らの故郷と、この場所をコネクトしたかったんだ」。

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    内装とインテリアデザインを手がけたのは、Bofink Design Studio創設者兼デザイナーであるJenny Askenfors。各店舗が所在する国と地域の文化やカルチャーを、北欧スタイル風に表現する。

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限定アイテムが並ぶギフトショップや東京を起点とするローカルアーティストを紹介する作品展示用スペースの他、本棚やCDプレーヤーなど、〈SNS〉の世界観を多方面から発信。

背景のカルチャーと
ローカルへのリスペクト

ストアオープン時には数百人に及ぶ人々が列を成したというが、普段はゆったりと穏やかな時間が流れるログロード代官山。その場所で、カフェと2つのストアの計3棟にわたり店を構える。「〈SNS〉のストアをつくるときは、簡単に見つかるような場所ではなく、わざわざ足を運ばなければならないエリアを選ぶ。この場所が人々の目的地になり、到着するまでの旅を楽しんで欲しいんだ。だからこそ、訪れた人になにか価値のある経験を与える必要がある」。
 日本の古い映画や伝統文化から着想を得た第1棟では、〈アディダスオリジナルス〉や〈クラークスオリジナルズ〉など、クラシックな美しさを残しつつもエッジが効いたアイテムを取り揃える。一方、モダンな日本のカルチャーをデザインソースとする第2棟は、ポップなカラーリングやフューチャリスティックな出で立ちの〈ミズノ〉や〈リーボック〉などが目を引く。そして、世界有数のスニーカーリテーラーとして幅広いブランドの取り扱いと豊富なオリジナルアイテムを有することに加え、シンプルな外装からは想像もつかない内装が訪れる人を魅了する。「僕らは、インスパイアを受けた都市にストアをつくる。そして、海外進出を考えるときはいつも東京がリストに載っていたよ。東京は、歴史が古いものと最先端で未来的なものが混在している。それから、別の場所から引用してきたなにかを改良するのがとても得意なんだ。細部への抜かりないこだわりや、クリエイションに対する真面目な姿勢も魅力的だ」。明確なリファレンスは浮かんでこずとも、何かしらの着想源があるのではないかと想像力を掻き立てる特徴的なオブジェやデザイン。彼らのフィルターを通して描かれる都市独特の要素が導線となり、視覚を通して人々の感性を刺激し、靴を買うという行為以上の経験を提供する。

第1棟(L3) / 70年代に公開された映画『修羅雪姫』からインスピレーションを受けた傘が飾られたインテリア。

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    Nike Air Force 1の靴の裏が着想となった禅テーブル。

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    タンショー社製のレザーを使用したゴジラがテーマとなっているコーナー。

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    2つあるうちひとつの試着室では、畳を使った個室を演出。ミラーのフレームに配された浮世絵など、細部までこだわりが見える。

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    一方の試着室は昔ながらの日本のシネマをイメージし、中では実際にクラシックな日本映画を上映している。

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第2棟(L4) / 入り口近くにある立体的な壁は『セーラームーン』の髪をイメージしたもの。遊び心が圧倒的な存在感を放つ。

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    ミラーで囲まれたフィッティングルームの中には、SNS専用プリクラ機が設置されている。

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 前述の通り、ショップとして構えるのは世界中の7都市7店舗のみ。ひとつの都市に多く出店しないアプローチにも〈SNS〉独自のスタイルが宿る。「以前は、スウェーデンに3店舗展開していたこともあった。そうすると、店舗として経営を回していくためにもっと商業的に考えなければならなかった。でもそれだと僕らが“場所”をもつ意味がなくなる。僕らのストアは、プロダクトを売るためだけでなく、都市特有のカルチャーに対する敬意も込めて、その場所の一部として根づかせ、人々をインスパイアできる存在でありたいんだ」。点と点を結ぶように、各地に広がる〈SNS〉の世界。それらは爆発的に拡大していくのではなく、その場所に根ざした暮らしやカルチャーの文脈の中で、人々に愛されながら、ゆっくりと、しかし着実にコミュニティを広げていく。

Information

Sneakersnstuff Tokyo

場所:〒150-0034 渋谷区代官山町13-1 ログロード代官山 L3, L4
TEL: 03-6868-8801
営業時間:12:00-18:00 (不定休)
※政府の発令に伴い、店舗の営業時間等が変更となる場合がございます。

SNS CAFÉ TOKYO
TEL:03-6868-8802
営業時間:8:00-18:00
場所:〒150-0034 東京都渋谷区代官山町13-1 ログロード代官山 L2
 
Website: sneakersnstuff.com
Instagram: @sneakersnstuff.tokyo

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