GRIND

CULTURE, INTERVIEW, MAGAZINE 2020.5.9

Marie Tomanova

Our Standars

自分らしくいることを
恐れない

ニューヨークを拠点に活動するフォトグラファー、 マリー・トマノヴァ。今年デビュー作「Young American」を 発表し、昨年8月には初来日に合わせた個展も開催した。 ライアン・マッギンレーが同作に寄稿した序文の一節に 「マリーの写真に写る人々は、自分らしくいられる。 彼女が写すダウンタウンのように、 アメリカのユースカルチャーが多様であり、 あらゆる要素を含むものであることを望んでいる」と記したように、既存の価値観に囚われない自分らしい在り方のヒントを、見つけることができそうだ。※こちらはGRIND Vol.97に掲載した記事です。

心を掴むポートレートで
自分を見つめ直す

ニューヨークを拠点に活動するフォトグラファー、マリー・トマノヴァ。写真集のタイトルにもあるように、アメリカのユースに焦点を当てて、彼女ならではの視点と、技術を注ぎ込んだ写真を通して、自身の感覚を表現する。彼女が切り取るのは、自分らしくあること。すなわちスタイルを持つことの重要性を発信している。『Young American』について「ユースとは、その力とは、そして何より人々のつながりや、すべての人が共有している確かな人間性についての写真集」と彼女が言うように、自分らしくあろうとする若者に強く引きつけられていることは、本誌のために提供してくれた、彼女が撮り続けている、ニューヨーク付近のユースを写した写真の数々を見れば明白だ。「ポートレートは人間性を描写してくれるもので、私が写真のなかに自分自身を見るように、写真に映る人々を通して、自分自身を見つめてほしい。多くの人が共通のコアを持った人間であると、感じてもらいたいの」。自分らしくあるために歩んできた人々が持つ、それぞれのバックボーンや背景が、人間性として彼女の写真に立ち現れる。彼女は被写体の深淵まで覗き込み、写真を通して自分自身を表現している。そしてそこに映る人々が、見た者を覗き込むような深みへと誘う。芯と力強さを感じさせるポートレートの数々が、私たちに本来備わっているであろう、大切な価値観について見つめ直すきっかけを与えてくれる。

Sarah Cummings @aheem_sosa
Kate Vitamin and Odie Burnatowski @katevitamin@pey_0die

Aheem @aheem_sosa

Fernada Ly @warukatta
Franco @francovelastiqui

Erik Van Gills @erikvgils
Alex Carranza @alexxcarranzaa

Maria Osado
Austin and Atticus
 @therealaustinpower@atticus_klasek

ルーツと結びつく
アイデンティティの渇望

写真を通して自分自身の在り方を表現するという、マリー・トマノヴァのスタイルは、彼女のルーツや背景との深い結びつきがあって生まれたもの。「共産主義国家であったチェコスロバキアに生まれて、私の両親は旅行に行くこともできなかったの。ある種の抑圧 がアメリカやアメリカン・ドリームについて考えるきっかけになっているのかも。2011年にチェコからアメリカに渡ったとき、長くても半年か1年くらいしかいないと思っていたけ ど、今ではもう8年も経ってしまって。もちろん辛い時もあったし、助けてくれる人も家族もいなくて、どん底も味わった。ホームシックになって帰ろうかと思った時もあったくらいに。でもそれも人生の一部だし、常にポジティブな側面を探そうとトライしているわ。 友人や家族、居心地のいい場所ルーツと結びつくアイデンティティの渇望から離れていても、新たな自分や物事との出会いを愛することができたし、その経験がの作品にも反映されている。アイデンティティや居場所を見つけるために、新たな国でもがいていたことは、とても強烈な経験だったし、アメリカの社会の中にどのように適応していくかという葛藤が、作品のベースにもなっている。撮影をする際には、どのような人であるか知るため多くの時間を費やして会話をするようにしているけど、それぞれの背景があって、とても魅力的だし、刺激を与えてくれる。瞳の中に特別な何かを感じさせるのは、被写体との 親密な関係性によるものでもあると思うわ。私が撮るポートレートに映る人々は、私自身 でもあるし、私たちでもあるということ。私たちは写真に映る彼らの瞳の中にあるの」。 生い立ちにも深く関係する、彼女のスタイルは、葛藤や苦悩を経て生まれた、強烈な個性を持つ確固たるアイデンティティでもある。受け取ることができる選択肢や情報量は、増加するばかりだが、自分という存在がそのなかに埋もれてしまう危険性も同時に孕んでいて、現に画一的な没個性を感じる状況も少なくない。「ニューヨークのユースカルチャーもそうだけど、そもそも一般的なユースカルチャーは、恐れを知らないし、輝かしい。そして強い声を持っているもの。私たちは立ち上がる必要があること、何かと向き合わなきゃいけないことを忘れていまいがちだけど、だからこそ声を上げるために立ち上がる人々を見るといつもインスパイアされているの。彼らは強いし、自分自身がどう感じているかを表現している、そして自分自身であることを恐れない」。自分を表現することが、自分らしさそれ自体に直結すると、マリー・トマノヴァは写真を通して訴えかけている。

PROFILE

Marie Tomanova

チェコ出身、ニューヨークで活躍するフォトグラファー。
パラダイムパブリッシングから出版した写真集『Young American』が全世界で完売となるなど、
次世代を担う注目のフォトグラファー。
2019年8月に日本での個展を開催したことも記憶に新しい。
@marietomanova

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