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MONTHLY / IN THE TOWN
SKWAT
流動的空間から生まれる
化学反応的なエネルギー
街の中から何かを発信していく場所。そうした場所で得ることができる、新たな出会いやクリエイティブに生きていくためのインスピレーションを探る当連載。今回は“流動的”な建物名でありプロジェクト名でもあるスクワット。現在は南青山のある空き物件を占拠しているが、3フロアから構成される場が訪れる人に与えてくれるエネルギーとは。
Photo Ryo Sato
Edit Shiori Nii
設計・デザイン事務所〈ダイケイ ミルズ〉と、アートブック・ディストリビューターの〈トゥエルブブックス〉が始動させたプロジェクト、スクワット。都心の空き物件に期間的なスペースを生み出していく同プロジェクトは、過去にライフスタイルショップのシボンや、デンマークのテキスタイルメーカーのクヴァドラなどとの取り組みによって、文化的なエネルギーを東京の都市空間に広めてきた。その場に惹かれるようにクリエイティブな人々が集い、自発的な感化などによる化学反応から、新しいクリエイションが都心を中心に生まれている。
現在はプラダ青山店に隣接する南青山の物件を占拠しており、今年5月末からは主に上のフロアにてトゥエルブブックスが扱う書物を展開。トゥエルブブックスは海外出版社の国内総合代理店として書籍の流通やプロモーションをしており、東京を拠点としたアートブック専門のディストリビューターだ。建物の階段部分などには単管パイプ等を、棚や什器にはリサイクル家具を使用し、必要最低限の装飾で空間を生かした内装となっている。良い意味でプロセスを感じることができる内観は、訪れる人の想像力を刺激してくれるような雰囲気をつくりだす。
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そんな流動的プロジェクトのスクワットに、フランスのファッションブランド〈ルメール〉が参加し、期間限定ショップを1階のフロアにオープンした。日本とその文化に敬意と関心を払ってきたという同ブランドのコメント通り、内装と什器には日本の古民家の廃材が再利用されている。ただのアパレルショップとしてではなく、〈ルメール〉の美しいシルエットの服と空間が調和し合い、訪れる人や服を身に着ける人に喜びや安らぎを与える“場”として機能する。
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1階から下へと続く階段を降りると、パークと名された“地下公園”がフロアを占める。多種多様なリサイクル家具が点在し、公園のベンチスペースのように自由に座ってくつろぎながら、各々の時間を有意義に過ごすことができる場所となっている。入れ代わり立ち代わり行われる期間限定の催しも行われており、訪れる度に新たな刺激を与えてくれる。小型売店のキヨスクも完備され、ドリンクやスナックも販売。ひと休憩や読書、仕事や友人との待ち合わせなど、都会の喧騒と隔てられた空間は非日常的ながらもリラックスできる空間だ。
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長い間ひとつの場所に構えてきた店には、間違いなくその店のスタイルや歴史、空気感が漂う。だがスクワットのような流動的で限定的な場所は、決して期間外には体感することができない一瞬を切り取った有限的価値が存在する。最近では実際の店舗に足を運ぶ重要性が主張され認識し直されてきてはいるが、今しか味わうことが出来ないリアルな場所だからこそ、なおさら実際に足を運び訪れる意義があるのではないだろうか。そこからインスピレーションや出会いを経て、自分のスタイルを彩り、日常を豊かにしていきたい。
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