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Carne Bollente Carne Bollente

FASHION, INTERVIEW 2024.5.20

Carne Bollente

Interview with Hijiri Endo, Agoston Palinko

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プラットフォーム

セックスポジティブというワードを掲げて集まった異なる職種の3人からなる〈カルネボレンテ〉。社会的にオープンではない、もしくはタブーとされるようなトピックを取り上げ、オリジナルのモチーフやグラフィックでユーモラスに表現している。センシティブな内容を扱いながらも、挑発に終始するのではなく、コミュニケーションの手段として機能する。ファウンダーである遠藤聖とアゴストン・パリンコの話から、そんなプラットフォームとしてのブランドのあり方が見えてくる。

Photo_Carne Bollente
Edit&Text_Fuka Yoshizawa

〈カルネボレンテ〉の発足は2015年。イラストレーターのアゴストン・パリンコ(以下A)、グラフィックデザイナー兼アートディレクターのテオドール・ファメリ、ファッションのバイイング業を行っていた遠藤聖(以下E)の3名によりスタートした。セックスモチーフのワンポイント刺繍のTシャツからはじまり、今ではコレクションとして展開するほどアイテム数も増え、ブランドやアーティストとのコラボレーションも積極的に行うなど、独自に世界観を広げてきている。ダイレクトに描かれたり過激に表現されたモチーフのプロダクトは、ユーモラスでキャッチーな印象を与える。しかしその表現の根底には、強いメッセージを宿している。〈カルネボレンテ〉のインディペンデントな活動は、ブランドの精神性を映し出しているのだ。

ー まず、なぜ異なる職種の3人が集まってブランドをはじめたのか、きっかけを教えてください。
(E)アゴストンとテオは、通っていたパリのアートスクールが同じで学生時代からの仲です。アゴストンが日本に交換留学に来ていた時に、僕は彼と知り合いました。もともと日本でサラリーマンをしていたのですが、ファッションの仕事に就きたいという一心でパリに移住し、そのタイミングで彼らと会うようになりました。3人とも、性に対する疑問をもっていて、タブーやネガティブなイメージを変えたいという共通の考えから生まれたのが〈カルネボレンテ〉でした。ブランドというよりアートプロジェクトという感じで、まずは小さい刺繍のTシャツからつくりはじめました。

ー いわゆるデザイナーという役割もいないんですよね。
(E)ペインター、グラフィックデザイナー兼アートディレクター、アパレルのバイイング業というように、服づくりに携わっていた人は誰もいなくて。デザインのプロセスもみんなのインプットを少しずつ形にするというやり方です。

(A)ファッションに固執していたわけではなく、たまたま表現する土俵がファッションだっただけなんです。だからこそ、自分たちのことをデザイナーとは思っていないのかもしれないですね。

ー だからこそ〈カルネボレンテ〉は、ファッションブランドというよりも、メッセージを媒介するためにあるように思えます。
(A)僕たちがつくるプロダクトに対して、自分の性にクエスチョンしたり会話が生まれるきっかけになったり、単にファッションだけで終わらせずに、コミュニケーションの一部としてのプラットフォームのようなものを目指しています。

ー ブランドとして展開するアイテムも以前より増えましたが、デザインプロセスとしてはどのように進行しているのですか?
(A)デザインのステップとしては、まず僕が文章でストーリーを書き、それをチームで共有し、意見を出し合い肉付けされたものをイラストとして描いていきます。そして最後にイラストに合ったアイテムを選定していきます。表現したいものがラグだったらラグを、デニムならデニムに。〈カルネボレンテ〉はイラスト中心だからこそ、まず文字のストーリーを書くことで全体のトーンが見えてくるし、イラストの背景も浮かび上がってくる。メッセージを発信する意味でもこのプロセスが重要なんです。

ー 24AWのテーマについてもお聞かせください。
(A)テーマの「One Night Stand」は一夜限りの関係という意味です。一回誰かと会って関係をもつこと自体は、ネガティブな考えが一般的ですよね。でも必ずしも悪いことだったり否定的なことだけではなく、そこには人と人が出会った時の高揚感や駆け引き、特別な気持ちがあると思うんです。そのなかで生まれるポジティブな感情を表現しました。星や夜の街、ホテルからの景色といったように、夜(Night)から連想したものをいたるところに散りばめた、気持ちが華やぐようなコレクションになっています。


  • スライド

    ディナーパーティにて、おそらく初対面の男女を写した70年代の写真から引っ張ってきたという柄のシャツ。この後の展開を想像させる。

  • スライド

    夜のクラブを連想し、楽しむ人々の手が描かれたノースリーブ。下着に書かれた「Amour toujours」は、いつも愛しているという意味。

  • スライド

    パーティに行ける仕事着のイメージでつくられたテーラリングのセットアップ。軽めな素材かつパッチワークのような絵柄なので、かしこまらずに着られる。

  • スライド

    ブランド初のパジャマも展開。今までになかったホームウェアも、ブランドのスタイルであるセックスモチーフの刺繍が施され、デイリーにも着用可能。

ー 来シーズンで10周年を迎えますが、活動を続けていく中でブランドに対する世間の考え方に変化は見られましたか?
(A)確実にポジティブな変化が生まれていると思います。僕らが活動をはじめた頃は、誰もジェンダーについて触れないし、ヨーロッパでさえ話題に上がっていなかったように思います。でもこの10年で世の中は大きく変化しました。インスタグラムのプロフィールでジェンダーのオプションができたりiPhoneの絵文字にもさまざまなバリエーションが増えたり。僕たちの活動も最初から完璧だったわけではなく、社会の変化とともに学びながら進化しています。

(E)〈カルネボレンテ〉のアイテムを置くことで、店の表現の幅が広がったという嬉しい意見もある一方で、コンテンツがNGという理由で取引ができなくなってしまうケースはまだあります。歯痒さを感じる部分ではありますが、逆に背中を押されますね。禁止されればされるほど燃えるというか、こういう経験こそが僕らを奮い立たせる原動力になります。

ー まだまだ課題の多いトピックだと思います。今後の活動についてはどのようなビジョンを立てていますか?
(E)今まさに今後についてミーティングを重ねているところなんです。10年服をつくってきて、自分たちが伝えたいメッセージは伝わっているのか、何を表現したいのか。でもやっぱりコミュニケーションとしてのブランドでありたいから、きっかけの提示は続けたいです。その中で着る人に自信を与えるみたいな部分にフォーカスしていきたいと思っています。

(A)僕らの服は、センシティブな面をもつからこそ、嫌悪感を抱かせたり挑発するためのものになってはいけません。大前提にこの考えがあります。広い視点で見たら僕らがやっていることは本当に些細なことかもしれませんが、それでも誰かの役に立てたり、ありのままの自分でいられる服を提供できることは素晴らしいことだと思っています。だからこそ、ファッションの枠に捉われずに挑戦したいです。ファッションははじまりのようなもので、世の中に僕らのセックスポジティブの概念が浸透するまではまだまだ道のりは長いよ。やることはたくさんあります。

Carne Bollente
2015年にスタートした、パリを拠点とするファッションブランド。胸元に施されたセックスモチーフの刺繍Tシャツをシグネチャーとし、ロゴやイラストをベースに性に関するトピックをポジティブに解釈したプロダクトを多数展開する。彼らのクリエイションは、メッセージを媒介するための自己表現。「セックスポジティブ」の概念を広めていくためのコミュニケーションツールとして、タブーとされがちなコンテンツをあえてユーモラスに扱う。
Photo END.

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@carnebollente

carnebollente.com

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