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FASHION, INTERVIEW 2021.6.14

TAAKK

Takuya Morikawa

根底と向き合い掴んだ
“グラデーション”の手応え

2012年に設立された〈ターク〉。デザイナーの森川拓野氏は2019年、FASHION PRIZE OF TOKYOの受賞デザイナーに選出され、翌2020年にパリでのコレクション発表の機会を得た。爆発的な勢いではなく、地に足をつけ徐々にその影響を広げていくブランドの背景には、森川氏の強い意志が感じられる。グラデーションの生地という〈ターク〉が辿り着いたひとつの表現の形は、単に生地のクオリティを示すだけでなく、森川氏のクリエイションに対する想いと呼応する。

Photo Ko Tsuchiya 
Edit&Text Shuhei Kawada

世界を見据え
足元に目を向ける

 異なる世界に橋を架けるような〈ターク〉のグラデーション生地を用いた洋服。MA-1が徐々に透明になったり、ジャケットが袖や裾の部分になるにつれて強張りのないシャツ地へと自然に表情を変えていく。ブランドを形成する一部ではあるが、間違いなく全体を紐解いていく上で重要な要素であるように思えるこのグラデーション生地は、モノづくりと真摯に向き合うからこそ見えてきた可能性なのだ。「服とテキスタイルは切っても切れない関係性だと思っていて、とても重要なので僕はひたすら生地屋さんに足を運ぶんです。生地屋さんの壁に無数にかかっているサンプルなどを見て、これができるなら、MA-1を透明にできるよねとか、テーラードジャケットをシャツの生地に変えられるよねとか、こんなことはできないかとか投げかけてテストしてもらっての繰り返し。自分も工場の人にもわからないから、糸帳を出してもらい、ひとつのスタート地点から、手探りに手当たり次第織ってもらって。生地という根本を突き詰めればもっといろんなことができるんじゃねえのっていう発想からはじまりました」。洋服の根本である生地に、まだまだ追求されていない余白を見出した森川氏。根底と向き合うという姿勢は、自身のモノづくりのスタイルとも強くリンクしている。

2021AWシーズンのショーに際して撮影された〈ターク〉の洋服の一部。グラデーション生地を用いることで、MA-1が新たな表情を見せる。スウィングトップは、徐々に透明になることで、インナーの柄がぼんやりと浮かんでくる。まさに生地という基本と向かい合った末に辿り着いた、〈ターク〉ならではの世界観。

「根本がすごく大事だというのは昔から教わり続けていたことですし、根本を大切にして洋服をつくっていたら辿り着くのがファブリックだったというか。発想を転換して新しいものを生み出すのがデザイナーの仕事じゃないですか。そこをひたすら追求していく先には生地がいつもありました。生地によって出来上がる洋服って全然違うし、その世界にのめり込んでいったらやっぱり面白い表現が眠っているんです。ひとつのことを突き詰めていくと意外に掘られていないものって結構あって、上辺を見るとやり尽くされているように見えても、深く掘っていくと意外と底の方にあるという」。洋服に込められる背景やストーリーは、ブランドとしての芯の強さ、軸を形成していくが、現状ではまだそのスタートが見えてきたに過ぎない。「誰もがつくれない生地を研究し尽くして、その上に表現をのせることができたら勝ちじゃないですか。ファブリックにしてもそうですが、誰もやっていないことを突き詰めていく、そして〈ターク〉にしかできないモノづくりというのは軸として絶対もっていないといけません。まだ規模感は大きくないですし、笑われてしまうのですが、世界でトップ10に入るようなモノづくりをしないといけないというのが目標で。せっかくなら後世に名を残したいじゃないですか。表面的にデザインを足して、パッと見強い服でも紐解いていくと薄いってこともよくある気がしてるんです。だからこそ簡単には紐解けないような、芯の強さをつくりたいんです」。グラデーションが異なる表情の生地を結ぶように、基本を突き詰めていく姿勢は、誰もが見たことのないクリエイションへの道筋なのかもしれない。オリジナリティ溢れる洋服の数々を提示する〈ターク〉には、まだ見ぬ景色へと導いてくれるような希望が感じられる。

PROFILE

TAAKK

2012年、デザイナーの森川拓野氏によって設立されたブランド。2019年にFASHION PRIZE OF TOKYOの受賞デザイナーに選出された。自身が足を運んで、洋服に用いる生地をつくり込むほどのこだわりと、普遍的なメンズウエアのアイテムに加わるデザイン性が特徴。今後ますます注目度が高まるデザイナー。

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