YARDSALE from vol.101
Pure Curiosity
ロンドンを拠点に発足した、インディペンデント・スケートカンパニー〈ヤードセール〉。今ではユーロスケートシーンを牽引する存在のひとつに。スケートボードをコアに、映像や洋服など、さまざまな表現方法にしっかりと自分たちの色をのせる自由な在り方で、リアルでピュアな好奇心をストリートに見る。
Photo Daniel Kreitem, Rafski
Edit Hiromu Sasaki
純粋な感性とともに
それぞれのライダーから感じ取れる圧倒的なスケーティングスタイル。身に纏っているレトロチックな洋服の中に光るセンス。それらを映し出すローファイな映像と洗練された音楽。ロンドンを拠点にするスケートカンパニー〈ヤードセール〉は全体を踏まえた抽象的な良さだけではなく、ひとつひとつをバラしても、各要素にしっかりとスタイルを感じることができる芯の強さをもつ。そんなスケートカンパニー発足のきっかけはどこにあるのか。ファウンダーのDaniel Kreitem はこう語る。「昔はスケートショップとストリートウエアのようなものが売っている店で働いていたんだ。でもドアの前に立って周りを見ると、退屈なものばかり売っていて、とてもじゃないけれどインスパイアなんかされない状態だったんだ。誰も自分のやりたいことを、自分のやり方でやっていないなって感じていて。でもスケートブランドだけは違ったんだ。クールなものとスタイルを可視化している映像。パレスやシュプリームがそうだった。その一方で俺も頭の中にはイメージがあったんだ。もちろん特に洋服をやることに関しては自信なんてまったくなかった。専門的な知識なんて一切なかったからね。でも昔からやっていたスケートを通じて、信頼できる間違いない周りの友達だったり、フィーリングとしての感性的な部分はあると信じていたから、これを実際に表現するべきだって思い2013年にはじめたのがきっかけさ」。
彼がスケートカルチャーを通じて養ってきた感覚に、理屈は関係ない。自分がもつ感性に忠実にクリエイションと向き合う。「映像に関しても特定の説明的なコンセプトは持たせていないよ。俺たちの日常を切り取っただけだし、音楽も自分たちが本当に好きなものを選んでいるだけ。そこに狙いなんてものはない。強いていうのなら、俺がスケートビデオに込めている目的は、それを見た人にスケートをしたいと思わせたいってことかな」。感覚に正直でいる姿勢はスケートボードというストリートカルチャーから学んだことであるのは明白だが、彼はその“カルチャー”に関して思うことがあるという。「スケートボードだけがストリートカルチャーではないってことさ。たとえ一般的なストリートカルチャーに対するイメージから離れていたとしても、そこに文化的な要素があり、ストリートの上で起きていることなら、それはストリートカルチャーってことなんだよ。シンプルなことさ。最近の受け取られ方が狭すぎるだけ。もっと広い意味をもつものなんだ」。そう話す彼らの活動や映像の雰囲気を見てみれば、改めてそれが何を抱き、何を表現しているのかを感じることができるはず。ストリートから広がった在り方を見るのはもちろんいい。だがその原点となるリアルなシーンを顧みることで再認識でき、新たなクリエイションがまた生まれていくのではないだろうか。