TAAKK AW21 Presentation
基本に立ち返る
服づくりと伝え方
2021年1月に21AWコレクションを発表した〈ターク〉。パリメンズファッションウィークの公式スケジュールに合わせて発表した動画だけでなく、2月にはフィジカルなショーも開催した。自由学園明日館という歴史あるロケーションで、デザイナーの森川拓野氏自らがマイクを持ち説明を行うというプレゼンテーションの形式。その裏側には服づくりにも通じる基本への考え方が。
Photo Ko Tsuchiya
Edit&Text Shuhei Kawada
洋服の強さを
言葉に変えて
2021年2月8日、自由学園明日館にて〈ターク〉の21AWコレクションのショーが行われた。自由学園明日館はフランク・ロイド・ライトが設計したことでも知られる、歴史ある会場で、デザイナーの森川氏が自らの言葉でプレゼンを行うという形式でスタートした。通常であればランウェイをモデルが歩き、淡々と進んでいくが、〈ターク〉のショーにおいては、服と向き合う時間がゆったりと流れていた。「このやり方はひとつの面白い提案だったかなと思っています。服づくりにおいても自分の基本をつくっていく途中だったので、パッと通り過ぎていくショーよりは、なにかをしっかり伝えたいというか、見てくれる人にわかってほしいなと思ったので、スタイリングもシンプルに見せました。演出のチームと話している時に、昔のオートクチュールの発表は、プレゼン形式で行われていたということがわかって、面白そうだねってやることにしました」。
タークのクリエイションにおいて強みとなるのが、オリジナルの生地など洋服の基礎を成す部分。そうした基礎と向き合い続け、徐々に確固たる地盤ができてきた手応えを感じているからこそ、しっかりと見せることを望んだ。服の根底があるからこそ、言葉にしても軽くならず、じっくりと見てもらうことをためらわない。21AWのテーマは『Grounded in Unreality』と題された、現実と非現実の狭間を行き来するような服が並んだ。コンセプチュアルにも思えるテーマをリアルな服としてつくり上げていく際にも、やはり基本である生地が重要な役割を果たした。なかでも〈ターク〉の服づくりにおいて、一番の特徴はグラデーション生地。MA-1が徐々に透明になっていったり、ジャケットが徐々にシャツ地へと姿を変えていくという技術が新鮮な表現を可能にしている。誰もが目にしたことのある生地や洋服から、まだ見ぬなにかを生み出すために森川氏が目を向けた生地の在り方。実際に生地屋に足を運びともにつくりあげていったオリジナルの生地の数々は、あらゆる境界を超えていく。「野菜の生産者も日本酒の生産者も自分の声でしっかりと伝えるじゃないですか。ファッションだけなんかちょっとカッコつけてそうしないという必要もないし、つくっている時はすごく大変な思いもしているから、外側だけでなく言葉で伝えることも必要かなと。なんとなくカッコよく見せるだけなら、スタイリングを盛り盛りにすればすごいことやってそうには見えますが、今回のようなやり方だと削ぎ落としていくしかないですね。ひとつひとつの洋服がもつ強さをそのまま伝えていくのはすごく難しいと感じましたね」。服の強さを偽りなく伝える今回のショーは、その場に訪れる人に対するメッセージであると同時に、〈ターク〉というブランドの確固たる力を発信する重要な場となった。
PROFILE
TAAKK
2012年、デザイナーの森川拓野氏によって設立されたブランド。2019年にFASHION PRIZE OF TOKYOの受賞デザイナーに選出された。自身が足を運んで、洋服に用いる生地を作り込むほどのこだわりと、普遍的なメンズウエアのアイテムに加わるデザイン性が特徴。今年度のLVMHプライズでは準決勝に残っており、今後ますます注目度が高まる。