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RICHARDSON from vol.102 RICHARDSON from vol.102

CULTURE, INTERVIEW, MAGAZINE 2021.5.11

RICHARDSON from vol.102

Andrew Richardson

純粋な自己表現の追求

セックスや政治、時にはバイオレンスに到るまで、社会的にタブーとされるコンテンツを取り上げてきた雑誌〈リチャードソン マガジン〉。そしてそこから派生して生まれたブランド〈リチャードソン〉。これらすべてを取り仕切るのが、アンドリュー・リチャードソンという男だ。刺激的なトピックを掲げることは、彼にとって世の中とのコミュニケーションを図る手段でもある。インディペンデントな動きを支える姿勢は、ひとつの明確なスタイルを提示する。

Edit&Interview Hiromu Sasaki 
Text Shuhei Kawada

多様なコミュニケーション

 表紙を飾るポルノスターの過激なビジュアル。誌面で扱われるセックス、政治、アート、ストリートカルチャー、社会問題など一見すると共通項を見出しづらいコンテンツの数々。1998年に創刊された〈リチャードソン マガジン〉は、現在まで9冊出版されている。アンドリュー・リチャードソンが自らの名を冠してはじめたこの冒険は、個人的な視点を貫いているが、その結果多くの人を魅了することになった。「僕は特に誰かに何かを伝えようとしているわけではないんだ。僕はただ僕が好きな雑誌を、自分自身のためにつくっている。この雑誌はセックス、挑発、政治などについてのスタイリッシュな分析と言えるだろう。過激な表現で思考を挑発して、タブーについての対話や意見交換を促そうとしているんだ」。一貫した姿勢で築き上げられてきた〈リチャードソン マガジン〉の世界観。キャリアのすべてを“コミュニケーションのスタイルを理解するため”と捉えている彼にとって、誰も目をつけていないような観点に辿り着くのは、自然なことだったのかもしれない。「僕が雑誌をはじめた時、まるで俳優にインタビューするのと同じように、ポルノスターにインタビューしたいと思っていた。条件を平等にしたかったんだ。またポルノグラフィティは、ビジュアルとして刺激し興奮させるものであることは事実だ。しかしその要素を少し取り除いて、もっと分析的な視点、思慮に富んだ観点から見て、ポルノがつくられる本来の目的ではなく、あくまでメタファーとして使用する。僕が若い頃、セックスピストルズなどのパンクロックが人気で、彼らはポルノやそれを噛み砕いたイメージで人々の反応を挑発していた。同じように僕自身も人々に疑問を問いかけ、考えさせたいんだ」。過激なイメージが先行するが、あくまでそれは人々を惹きつけるフックに過ぎないのかもしれない。わかりやすいイメージから、その奥に本質を忍ばせる。単純な反応ではなく、より深い部分でのコミュニケーションをアンドリューは模索してきたのだ。今ではその手段を拡張させ、ブランドとしての存在感も徐々に増してきている。「〈リチャードソン〉の洋服は〈リチャードソン マガジン〉の世界観が好きな人のための、ユニフォームのような感じだね。僕らのことを理解してくれる人とコミュニケーションをとり、自分たちの世界をつくっていきたいと考えているよ。とはいえ、ブランドの本質を理解するために、雑誌を読まなくてはいけないというわけでもないよ。雑誌を知らなくても洋服を買ってくれる人の中には、無意識のうちに、フィーリングや意図を理解している人がいるのかもしれない。だからこそ雑誌、洋服どちらにも同じアイディアや哲学が反映されているし、情報を注ぎ込んでいる。僕らがやっているものすべてにスピリットが宿っているんだよ」。アンドリューが投げかける世間への問いは、形を変えて人々に届く。どのようなアウトプットであっても、人々が疑問や興味をもち追求していくきっかけを散りばめているのだ。

永続性のある
フィジカルな存在

 純粋な自己表現のフォームとして、雑誌、アパレルというリアルな物質に思想を乗せていくアンドリュー。フィジカルなものに対する考え方にも彼のスタイルが滲む。「雑誌には言語があり、異なる種類の紙、異なるタイプの印刷、異なる折りたたみの方法がある。雑誌や本の物質としての永続性を楽しんでいるんだ。電子的な情報ではなくて、フィジカルなものとして世界に存在しているからね。どの紙を使うか、どんなカバーにするか、こうした選択の連続が、ひとつひとつの決断が、雑誌という物体を完成させる」。時代の流れを見ると、出版に関して景気が良い状況とは決して言えない。しかし、彼が雑誌というフォーマットを活用するのは、商業的な目線ではなく、あくまで自身の思考や世間へのメッセージをひとつのパッケージとして打ち出すため。そして自由で制限されない表現が、結果としてその先の商業的な成功へと繋がっていくという事実は、希望すら感じさせる。「この雑誌でたくさん稼げそうだと思って雑誌をつくっているわけではない。ビジネスではなくて僕のファッションのキャリアや自由な表現からくるアイディアなんだ。要するに僕の自己表現のフォームだね。自分のアイディアを、仲間とともに表現できる世界にいることができてラッキーだよ」。そんな〈リチャードソン マガジン〉はまもなく10号の発売を控えているという。「出版されるまで、内容については多くを話さないようにしているんだ。でも最初の1、2号くらいのオリジナルに近いような雰囲気になるかな。ここ最近のものよりもっと自由で、非商業的な感じだよ」。自分の表現を続けるために見出した、フィジカルな物質での発信は、熱量や温度感、そして伝えたい物事の純度を保つことを可能にしている。純粋な自己表現を追い求めるアンドリュー・リチャードソンのスタイルは、この先もあらゆる角度から人々の感覚を刺激していくことだろう。

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Richardson

TEL_03-6455-5885

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