OTTO 958
Kiko Kostadinov × Morán Morán
Interview with Kiko Kostadinov & Al Moran
ルールを破れる
実験的なプロジェクト
2019年の11月に開催された、とあるエキシビション。〈OTTO 95.8〉と題されたその展示は、〈キコ コスタディノフ〉のデザイナー、キコ・コスタディノフがL.A.の現代アートギャラリー〈モラン モラン〉と手を組み行われた。このプロジェクトから派生し、WEBやSNSを中心に〈OTTO 958〉としていくつかのオリジナルのプロダクトを展開している。一体何が狙いなのか、キコ・コスタディノフと〈モラン モラン〉の設立者のひとりであるアル・モランが語ってくれた。
Translation Shiori Nii
Edit&Text Shuhei Kawada
プロジェクトの開始地点でもあるエキシビションに際してつくられたオブジェや、実際の展示風景。そしてそこから派生してアパレルのプロダクトが生まれることになる。
自分たちの世界を創造し続ける
そもそも〈OTTO 958〉について、見覚えのない方々のためにも、その概要を改めて整理する。2019年の11月頃、ロサンゼルスの現代アートギャラリー、〈モラン モラン〉にて、キコ・コスタディノフの作品を〈OTTO 95.8〉と題したプロジェクトとして展示した。キコが手がけたオブジェと洋服の展示だけではプロジェクトは終了せず、そこから派生しWEBやSNSが立ち上がっている。オリジナルのプロダクトと合わせて、ジャンルを超えた思想が織り込まれ、異様な空気を放っているのだが、その裏側が少しずつ見えてきた。「L.A.でエキシビションをしようと計画をはじめた2018年頃、プロジェクトはスタートしました。〈モラン モラン〉で行ったキコのエキシビションを目的としてはじめたが、関係性が育まれるにつれ、いろいろな方向に進みはじめたのです。私たちの会話は、アート、デザイン、文学、哲学、歴史、宗教、批判的思考、理論に至るまで、共通する興味へと広がっていきました。次第に互いの考えに対して深い敬意をもつようになり、このプロジェクトには形式はどうであれ命が宿っているのだと確信しました」。
あくまで個々人の興味の延長として、自由に展開していくことで、制約のない新たなアイディアが生まれていく。「このプロジェクトはいわゆる伝統的な“ブランド”の発展よりもはるかに個人的な興味の探索だと言えるでしょう。私たちが今まで創作してきたアウトプットは、ここ数年にわたって共有してきた会話にルーツがあり、今もそれは継続しています。すべてが私たちの会話のダイジェストであり、両者が共有する興味の延長のようなものです。会話からプロダクトが拡張し、つくり上げられること、そしてそれらがこの世の中でどのように受け容れられるかということに興味があります」。個々人のアウトプットでは達成されない、2人が混ざるからこそのよりピンポイントで純度の高いクリエイションは徐々に世間で認知されはじめている。「私たちの世界を創造し続けること、そして興味に導かれどのような方向に対してもオープンでいることに面白さを見出しています。〈OTTO 958〉は我々双方にとって、実験的なプロジェクトです。各々がルールを破れる場所、そしてとても自由で刺激的なやり方で、リスクを負って賭けに出ることができる場所なのです」。
〈OTTO 958〉の洋服の一部。色の組み合わせやシルエット、素材の使い方など、キコ自身のブランドとはまた異なるアプローチがうかがえる。これらは全てお互いのアイディアが作用し合い、会話から派生するプロダクトなのだ。またビジュアルに用いられる不自然な加工などが謎に包まれたムードを一層加速させる。彼らのWEBを見ながら、そのリファレンスを紐解いていくのも楽しみ方のひとつかもしれない。
PROFILE
OTTO 958
キコ・コスタディノフとアル・モランによって展開されるプロジェクト。2019年の〈モラン モラン〉でのエキシビションから派生し、今では不定期に洋服などもリリースされている。