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MONTHLY / Listening with Emotions vol.01 MONTHLY / Listening with Emotions vol.01

INTERVIEW, MUSIC 2021.1.28

MONTHLY / Listening with Emotions vol.01

Selector : Kunichi Nomura

人は誰もが感情を持っており、それは音楽と深く結びつき互いに作用し合っている。感情にポジティブな影響を与え、人生を豊かにしてくれることがあるのが音楽の魅力。そんな側面を持つ音楽はカルチャーとも深い関わりを持ち、男の“スタイル”にとって重要な要素だ。本連載は皆が持つ“感情”から、大事なカルチャーのひとつでもある“音楽”へと誘う。記念すべき第1回目は、Tripster代表の野村訓市氏。
※こちらはGRIND Vol.95に掲載した記事です。

Photo Yoko Tagawa
Edit Hiromu Sasaki

  • Artist name
    2Pac

    Song title
    Thugz Mansion
  • 【 懐かしい時 】
  • Thugz Mansion
  • Artist name
    2Pac
    Song title
    Thugz Mansion

    ヒップホップって色々あるけど、この曲みたいなチルなやつがすごい好きなんです。それでこの曲は昔聴いていたから懐かしいってのもあるけど、何かのきっかけで古い友達に偶然会ったり昔のことを思い出したりすることあるじゃないですか?懐かしいって不思議な感情で、“戻りたい”とか“あの時楽しかったな”とか。でも同じことは2度と起こらないわけで。そういったことを懐かしく思う時の、サントラとしてすごくしつくりくるんですよね。何について懐かしいのかって聞かれたら困るけど、“懐かしい何か”を感じるんですよねこの曲には。

  • Artist name
    Bill Evans

    Song title
    Peace Piece
  • 【 寂しい時 】
  • Peace Piece
  • Artist name
    Bill Evans
    Song title
    Peace Piece

    はじめて聴いた後にタイトルを知ったんだけど、もうなんか本当にすげえ良いなって思ったわけですね。“平和のかけら”って意味なんですが、寂しい音の中に救いがあったりするというか。聴いても寂しいまま沈んでいくんじゃなくて、プラマイゼロにしてくれる感覚。ひとりも悪くねえなって思えたりするんです。俺が若い時はビル・エパンスを好きな人って言ったら、ジャズバーで彼の曲を聴いてウイスキーを飲んでる大人のイメージで、当時は何だよ...って感じだったんですけどね(笑)。実はスケーターとかがひとりで帰る時とかに、ヘッドホンで聴いてたら良い気分で帰れると思いますよ。

  • Artist name
    Dump

    Song title
    NYC TONIGHT
    (Version Shintaro Sakamoto)
  • 【 ウキウキした時 】
  • NYC TONIGHT<br>(Version Shintaro Sakamoto)
  • Artist name
    Dump
    Song title
    NYC TONIGHT
    (Version Shintaro Sakamoto)

    GGアリンってハードコアバンドの変人アーティストがNYにいたんだけど、彼の曲をヨ・ラ・テンゴってアメリカンバンドのベーシストがやっている、Dumpってソロユニットがカバーしたやつで。原曲は叫んでいる曲なのに、それをディスコにしちゃったんですね。それをゆらゆら帝国の坂本慎太郎さんがリミックスしたバージョンが俺は好きなんです。この曲はウキウキした時に聴くべき。“今夜NYで遊びに行こう”って曲だから街のことも歌っていて、キラキラした街の情景が遊びに行こうぜって気分にさせますね。NYのパーティでかけた時もすごい盛り上がりましたね。

  • Artist name
    Oasis

    Song title
    Champagne Supernova
  • 【 叫びたい時 】
  • Champagne Supernova
  • Artist name
    Oasis
    Song title
    Champagne Supernova

    この曲もちょっと懐かしむような、夏の終わりの曲なんだけど熱い歌詞なわけですよ。イギリスのパブとかに行くと、夏にこの曲がかかったら知らない奴らで大合唱になったりして(笑)。兄ちゃんたちのハートに歌詞が刺さるんじゃないですかね。日本で言うブルーハーツを誰かがカラオケとかで入れたら、皆いきなり飛び跳ね出すみたいな。それに似たような青臭いところもこの曲にはあると思います。メロディーももちろん叫びたくなるんですけど、言ってる歌詞が共感しやすいんじゃないかな。だから叫びたいって感情になるんじゃないかな。

日常を彩るサウンドトラック

「ほぼ大体の映画には必ず“音”っていうサントラがあるじゃないですか?悲しいシーンだったら悲しい曲、逆に陽気なシーンだったら陽気な曲みたいな感じで心情を表現している。だから映画ってサントラがないと成立しないと思うんですね」。音楽と感情について尋ねると、映画を例として話しはじめてくれた。確かに映画のサントラは登場人物との感情を共感させ、観る人を映像の世界に引き込む力がある。「だから自分の人生や毎日が映画だとしたら、俺はサントラが必要なわけですよ。自分の感情とかやることに対して、何の音楽をかけて聴こうって。俺にとって音楽は自分の日常のサントラで彩ってくれるわけだから、同じ曲やジャンルだけしか聴かないってことは一切無いし、その感覚に合ったものを常に探して聴いているから雑多な音楽を聴いてますね。そういう音に出会おうと思ったら、ジャンルなんか気にしていてもしょうがないし、色々なものを拒否するのは勿体無いんじゃないか?って思っちゃいますね俺は。だから俺は死ぬまでそれに合うコンプリートしないサントラを永遠に作り続けていくし、皆もそうするべきなんじゃない?って勝手に思ってます。何故かって感情と音楽は絶対にリンクしているから。それから良い映画やサントラって予想外の曲を映像に持ってきて、それがシーンとめちゃめちゃ合ってるってことあるじゃないですか?良くないって思っていた曲がすごく良く聴こえたりだとか、それが音楽の面白さだと思うんですよね」。音楽の面白味=人生の面白味ともなり得る。野村氏のように、自分たちの日常をサントラとしての音楽で彩ってみてはどうだろう。

PROFILE

野村訓市

建築デザイン&デイレクション集団Tripsler代表の肩書きを持ちながら、編集やデイレクションも手がけている。またJ-WAVEにて旅と音楽にまつわる番組を持ち、ラジオナビゲーターとしても務めるなど、多岐なフィールドにて活動を行う。

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