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Medeia1.0×MAGNUM PHOTOS Medeia1.0×MAGNUM PHOTOS

CULTURE 2021.6.22

Medeia1.0×MAGNUM PHOTOS

Edit&Text Shuhei Kawada

歴史を風化させないために
Tシャツに託すメッセージ

2021年3月にローンチされたプロジェクト、〈メーディア1.0〉。Tシャツをメディアと捉えメッセージを発信する取り組みの第1弾として、世界最高峰の写真家集団として知られる〈マグナム・フォト〉と力を合わせた“Racism”を発表した。〈マグナム・フォト〉が切り取ってきた、偽りない現実の象徴を収める報道写真の数々。今回は、世界的にも有名な3枚の写真を用いて、世界中で起こっている、いまだに解決できない社会が抱える課題を、Tシャツを通じて届けようとしている。日々私たちが身に着ける洋服は、自分たちのスタイルを表すものでもあるが、時には社会へのメッセージを発する媒体にもなりうる。ファッションが入り口となり、多くの人に認知され、歴史的な問題や社会課題が抱える、深刻な背景について考える機会へと繋がっていくことを目指す〈メーディア1.0〉。より気軽に楽しめるTシャツという存在に託して広げていく姿勢は、決して取り扱う内容自体を軽視しているのではなく、受け継ぎ、目を向けなくてはいけない事実を考える土台をつくろうという意志の表れだと言えるだろう。


Photo:Ian Berry/Magnum Photos/AFLO

強いコントラストに浮かぶ、躍動感を感じさせる手の動き、叫んでいるかのように開かれた口。何かを強く訴えかけようとしている男性の背後には、警察官のようにも見える人々が並び、物々しい雰囲気を感じさせる。この写真は1994年4月3日、南アフリカ共和国のリンポポ州モリアで開催された「Zion Christian Church(ZCC)」の年次総会で撮影された。 南アフリカでは同月27日に史上初の全人種による普通選挙を控える中、この年次総会には当時の南アフリカ大統領F.W.デクラーク、後の大統領として全民族融和の象徴となるネルソン・マンデラ、南アフリカ民族ズールー人政党のイ ンカタ自由党指導マンゴスツ・ブテレジらも出席。選挙へ強い影響力をもつ三者の行動には注目が集った。 当時の南アフリカでは、全人種選挙の実施に向けては1948年に制度化された「アパルトヘイト(人種隔離政策)」撤廃の期待は高まる中、民衆を巻き込んだ抗争が続くなど選挙直前まで不安の日々が続いていた。選挙ではネルソン・マンデラ率いるアフリカ民族会議(ANC)が圧勝し、マンデラが大統領に就任。同年にアパルトヘイトは撤廃された。



Photo:Ian Berry/Magnum Photos/AFLO

曇り空を背景に撮影された群衆は性別も、年齢も、人種も多様な覆面やマスクをした人々。「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」のプラカードを掲げ、拳を天に向けて突き上げている。この写真は新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で広がっている最中の2020年6月13日、フランスのパリ東部に位置するレピュブリック(共和国)広場で撮影された。このデモは2016年7月19日にパリ北郊で、黒人男性アダマ・トラオレが警察に拘束され逮捕後まもなく死亡した事件に対する抗議であった。「Black Lives Matter」とは 人に対する警察の暴力に反対する運動のことを指す。2020年5月25日にミネアポリス近郊で、アフリカ系アメリカ人の黒人男性ジョージ・フロイドが警察官の不適切な拘束方法によって死亡させられた事件をきっかけに瞬く間にアメリカ全土で抗議活動「Justice for George」「I Can't Breathe」、そして「Black Lives Matter」のフレーズとともに広がっていった。その後世界各地にも広がりを見せ、白人警察官による人種差別的な行動だけでなく、より根源的な奴隷問題までもが言及されるなど、世界の主要都市を中心に各地に残る根深い人種差別問題が注目を浴びることとなった。



Photo:Burt Glinn/Magnum Photos/AFLO

足元にハイヒールだけ装着されたマネキンが頭部から胸部、そして下半身にかけて10発以上被弾している。奥には銃を手にした兵士のような人物が靄もしくは雨の中でうっすらと写っている。不自然に佇むマネキンの姿、そして路上に散乱したゴミ。この写真はマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺された翌朝、激しい暴動のあったワシントン D.C.の路上で撮影された。静寂すら感じる空間が暴動の激しさをより一層強く訴えてかけてくる。 1968年4月4日、アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導 マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが遊説で訪れていたテネシー州で暗殺された。キング牧師はメンフィス市内のロレイン・モーテルで集会の打ち合わせを行っていたところを白人至上主義者のジェームズ・アール・レイに射殺された。この暗殺の数時間後にはワシントン D.C.でアフリカ系アメリカ人による暴動が発生し、その後全米各地へ拡大していった。

Information

Medeia1.0

https://medeia.site/

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