GRIND

CULTURE, INTERVIEW, MONTHLY 2020.7.21

GAME CHANGER

FACETASM

今できることを
最大化するために

従来の価値観や方法が見直されているコロナ禍。ファッションやカルチャーシーンにおいてもその影響は計り知れない。各地でコレクションの日程や開催方法が変更されており、100年の歴史を誇るパリコレクションも、メンズのみ史上初のデジタル発表となった。選ばれしブランドだけに与えられるステージ。その限られた世界の舞台で独自の輝きを放つのが、ファセッタズム。フランス語で宝石などの切り子面を意味する「facet」から派生した造語をブランド名として掲げているように、多角的でさまざまな表情をもち、刻々と変化するこの時代においても、常に挑戦を続けている。この先の時代におけるクリエイションのヒントを探るべく、ファセッタズムのデザイナー、落合宏理氏に話を聞いた。

Photo_Ryo Sato(Portrait)

新しい表現方法に
希望と可能性を込めて

 21SSシーズンのコレクションを披露する場となるはずであった今回のパリメンズコレクション。各国から厳選されたブランドにのみ与えられる、公式スケジュール内で発表を行う機会。はじめてその切符をつかんだ2016年のパリデビューから5年目となる、今回のコレクションに向けた準備もすでにスタートを切っており、かねてから落合氏が興味をもっていたフーリガンカルチャーやカジュアルズなど、70年代頃を象徴するUKスタイルに異素材の掛け合わせや配色などによって、オリジナリティを加えたデザインで進行していた。しかし新型コロナウイルスやBLM運動などの、世界を揺るがす出来事によって状況は一変した。「ブランドとして、ただ洋服をデザインして表現するだけで終わりにはできない状況になっています。東京からパリコレのオンステージで発表できるということを責任と捉えて、自分たちのメッセージを込めて、見てくれた人の心をちょっとでもやわらかくできればいいなって」。完成に近かった洋服にファセッタズムのポジティブなメッセージとしてプリントされたのが、落合氏自身の息子が描いた絵。4歳のピュアな少年が思いのままに描くペイントは、夢、希望というポジティブな要素を伝えるメタファーなのだ。誰かを幸せに、誰かを楽しませるといったファッションの本質を浮き彫りにするクリエイションは、さらなる価値を伴って世界へと発信されていく。
 初の試みであるデジタルファッションウィークに対しても、落合氏は自身の表現にポジティブな要素を加えたように、前向きな姿勢で新しい可能性を見出している。「ランウェイでのファッションショーは、その空間にいる人が特別な時間を過ごせるように作られたスペシャルな環境で、その価値は何にも変えられません。しかし、製作の過程や最新のコレクションがもっと人の目に見られないと意味がないファッションシーンにおいて、実際はそこまで拡散されていないこともあり、デジタルへの切り替えはどこかで必ずやらなければいけなかったとも思います。デジタル化は、工夫次第でとても面白いものになり得るし、今は工夫の時代。どれだけお金をかけるかではなく、自分の脳みそにあるものを使ってどう表現するかなんです」。

  • スライド

    70年代〜80年代のUKカルチャーからインスパイアされた、トレンチコートやタータンチェックなどの定番アイテムが、ファセッタズムの世界観を介することにより新たな一面を見せる。

  • スライド

    70年代〜80年代のUKカルチャーからインスパイアされた、トレンチコートやタータンチェックなどの定番アイテムが、ファセッタズムの世界観を介することにより新たな一面を見せる。

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    70年代〜80年代のUKカルチャーからインスパイアされた、トレンチコートやタータンチェックなどの定番アイテムが、ファセッタズムの世界観を介することにより新たな一面を見せる。

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    70年代〜80年代のUKカルチャーからインスパイアされた、トレンチコートやタータンチェックなどの定番アイテムが、ファセッタズムの世界観を介することにより新たな一面を見せる。

地下・地上・空という3つの層から「東京」を表現。世界中が閉ざされた状況にある今、デジタル配信だからこそ伝えることができるリアルな東京の空気感。モデル全員が集合するクライマックスシーンからは、東京から世の中へと発信されるポジティブで力強いエネルギーが感じられる。

「心が動いた」と語る、落合氏自身の息子の絵。いたいけなペイントは、目まぐるしい生活の中で、忘れかけていた夢や純粋な心を呼び起こす。

  • スライド

    撮影時のメイキング写真。今回のクリエイティブを担当したのは、NIKELABとのプロジェクトなどで知られるCEKAI(セカイ)。東京の風に乗せて、ファセッタズムの世界観が切り取られる。

  • スライド

    撮影時のメイキング写真。今回のクリエイティブを担当したのは、NIKELABとのプロジェクトなどで知られるCEKAI(セカイ)。東京の風に乗せて、ファセッタズムの世界観が切り取られる。

表現の幅と
自身の背景

 変化や挑戦を拒まず、状況を踏まえた上で表現へと変えていく。そしてジャンルレスで、多様な表情を持つ洋服の数々が生まれていく。こうした感覚や姿勢は、落合氏の背景とリンクしている。「中学生の頃はラルフローレンとかアメリカンカルチャーが好きで、高校くらいからアンダーカバーが出てきて、マルジェラとかにもハマって……それから目白にパタゴニアができて。東京出身で、そういう全てを体感できたのは面白かったです」。落合氏がリアルタイムで経験した“裏原”の勃興や、あらゆるカルチャーが混ざり合う様。好奇心のままに自身へ取り込みながら、自然とミックスする感覚を身に付けていったのだろうか。ここ数年世界的にも、“裏原”カルチャーや当時のクリエイションが脚光を浴びているが、流行的な意味合いではなく、そうした空気を肌で感じクリエイションを続けてきた落合氏は、自らに根ざした東京を意識せずとも体現し続けてきたのかもしれない。パリへと発表の舞台を移したことで、客観的な視点を手に入れ、結果的に得意とする部分が浮かび上がりクリエイションの幅も広がっているのではないだろうか。だからこそ、ファセッタズムは東京を代表するブランドとして、さらなる飛躍の予感を感じさせてくれる。

RIOT FACETASM

20FWコレクションより新たなライン、RIOT FACETASMがスタートする。落合氏の等身大のスタイルが落とし込まれたコレクションは、ブランドのアイコンとなる「羽根」モチーフのように、更に自由で軽快なものに。

Collaboration

(左)FACETASM × Coca-Cola
ファセッタズムのクリエイションの幅を裏付ける一要素であるのが、ユニークなコラボレーションの視点。コカ・コーラとの異彩のコラボレーションでは、落合氏の所有するコカ・コーラワークウェアとアトランタに在する本社、ザ コカ・コーラカンパニーにある膨大な資料から着想を得た。全く異なる2つの業種が、互いに確立されたスタイルをリスペクトすることで実現。
(右)FACETASM × Levi's
20SSで発表した、リーバイスとのコラボレーション。サンフランシスコの本社に足を運び、実際にアーカイブに触れることで感じた歴史。ジーンズやトラッカージャケットなどのアイコニックなプロダクトを解体し設計し直すことで、ファセッタズムが得意とするレイヤードや美しいミックススタイルで再解釈。常に革新と変化を遂げる2つのブランドが共鳴し合い新たな価値観を追求する。

PROFILE

FACETASM

ブランド名は、フランス語の「facet(ダイヤモンド等の切り子面を意味する単語)」から「多彩な顔を持つ」という意味が込められた造語。2015年より発表の場を海外に移す。デザイナーの落合宏理氏は、リオ五輪閉会式の東京パフォーマンスで衣装を担当するなど、近年東京を代表するブランドとしてますます注目を浴びる存在となっている。

https://store.facetasm.jp/

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