AFFIX from vol.101
Many eyes see more than two
「3人寄れば文殊の知恵」ということわざは、凡人でも3人集まれば良い知恵が出るというような意味合いだが、プロフェッショナルが集う集団であれば、さらなる可能性が引き出されることを〈アフィックス〉が示す。属するメンバーの知名度ではなく、『新しい活用性』をコンセプトに、集団としての方向性を明確にしながら、クリエイションを通して人々を魅了する。人との関係性から生まれる創造は、現状を打開する重要なキーとなる。
Photo/Styling/Model AFFIX studio
Edit Shuhei Kawada
創造的なスタジオが生む
クリエイティブな輪
2016年にスタジオスペースを創設し、2018FWシーズンより本格的にプロダクトを展開しはじめた、ロンドンを拠点に活動するコレクティブ〈アフィックス〉。キコ・コスタディノフ、マイケル・コッペルマン、ステファン・マン、タロウ・レイの4人によって立ち上げられた小規模なこの集団は、asicsとの継続的なコラボレーションなど、話題性を与えながら着実に成長を続けている。ブランドの立ち上げ時はそれぞれのメンバーの知名度も相まって注目されたが、今ではより集団としての側面を強めていることが、ステファンの話から見えてくる。「〈アフィックス〉のはじまりは2016年にオリジナルのスタジオスペースを創設したころにさかのぼります。当初はこのチームのメンバーがそれぞれのプロジェクトに取り組むためのコワーキングスペースでした。我々は周りにいる才能あふれる人々のための創造的なスペースがほしかったのです」。かくして〈アフィックス〉の原形ができあがるわけだが、属するそれぞれの役割は明確ではなくプロジェクトに応じて流動的に変化していく。「役割といえば、〈アフィックス〉のスタッフであるというだけで、固定されたものはありません。小さな会社なので、アイディアを交換しながらそれぞれが流動的に関与します。インスタレーション、メインコレクション、コラボレーションなどプロジェクトによりますが、チーム全体の高揚感が重要で、こうして〈アフィックス〉について話すときは、我々だけでなく、ともに何かをつくるスタジオ全体として話すことが重要だと考えています」。集団として、チームとしての動きが、新たなクリエイションを生み出す。1人の視点だけでは気づかない、人との関係性やコミュニケーションによって得られるものを、軸に照らし合わせながら取り入れていく。
“新しい活用性”を求めて
アイディアを共有し、関わり合いの中でクリエイションを行う。明確な方向が見えているからこそ、多くの人の意見が効果的に機能する。彼らがコンセプトとして掲げる、“New Utility”。プロダクトの多くにも刻まれているように、“新しい活用性”という意味を指す。「“新しい活用性”とは、物事を異なる視点で見るということです。人々が衣服とテクノロジーを日常にどう適切に取り入れ、ニーズにあった方法で機能させるかについて、興味深い点をまとめた言葉です」。彼らが手掛けるプロダクトを見ると、ワークウエアに近しいディテールや素材感を感じられる。ワークウエア調のプロダクトに、独特のカラーやプリント、シルエットなどで緩急をつけ、個性ある無機質へと変換していく。そしてその過程では、〈アフィックス〉に属するメンバー、またはそこに関わる人々のアイディアが常に行き交い反映されている。プロダクトやイメージビジュアルなど、個性を放ちながらも、あまり人の匂いがせず、匿名性すら感じさせる彼らは、集団として流動的に姿を変えながら、“新しい活用性”を求めて動き続ける。「私たちが思うコレクティブとは、スタジオの創設メンバーやスタジオで働いているチームだけではありません。私たちと一緒になってプロジェクトを手掛けたり、コラボレーションしたり、繋がりをつくってくれたりという、クリエイティブサークルに属している全員を指します。このやり方がうまく作用し、会話を多様で刺激的なものにしてくれるのです」。コレクティブをこのように定義したステファン。小規模ながらも常にコミュニケーションをとり、さまざまな視点を持ってプロジェクトに取り組んでいく。プロダクトに落とし込むべく追求される“New Utility”というコンセプトは、彼らのクリエイションだけに止まらず、コレクティブとしての在り方における“新しい活用性”を提示している。