GRIND FEATURE TOPIC『The way of Materials』
Our Legacy
立ち止まり振り返り
更新していく
洋服を作るのに欠かせない生地。またはデザインをするうえで欠かせない、インスピレーション。常になにかの根底にある『素材』への考え方を探ることで、新たなクリエイションの糸口が見えてくる。スウェーデンを拠点に活動するブランド、〈アワー レガシー〉。彼らが運営する『ワークショップ』と名付けられた店舗について、ブランドを手がけるヨックム・ハリンとクリストファー・ニーイングに話を聞いた。〈アワー レガシー〉と素材の関係性とは。
古くなったモノに
新たな命を
スウェーデンの中心地、ストックホルムに『ワークショップ』と名付けられた〈アワー レガシー〉が運営するショップがある。ここには単にブランドの新作アイテムがシーズンごとに並ぶわけではない。ヨックム「『ワークショップ』はバランスを保つためのハブです。残り物や余った生地、過去のコレクションの洋服にリスペクトを持って、何か新しいモノへと高めていきます」。クリストファー「我々のプロダクトをリサイクルすることに加え、シーズンのコレクションから切り離し、デザインにおける考え方をアップサイクルしていくという点が非常に興味深いのです」。すでに手がけたプロダクト、インスピレーションを受けた洋服、余った生地など、ブランドのコレクションとして日の目を見ることのなかったアイテムを、過去の産物とするのではなく、手を加えてクリエイションへと昇華させる。クリストファー「生地と素材が私たちのDNAです。ブランドの極めて重要な部分であると同時に、期待されている部分でもあります。生地の扱いやその配置で、常に型破りなことをしてきましたし、生地本来の使い方に新たな意味合いを付け加えようとしているのです」。マテリアルが根幹を成すからこそ、過去の素材にも目を向けてともに前に進んでいく。ヨックム「今必要なのはペースを落とすことではないでしょうか。多くを捨て去るのではなく、何を使うか、何が本当に必要かをもっと意識するべきです。私たちは過剰に生産するより、古くなったモノに新たな命を吹き込むことを好みます。何事も早めようとしてしまいますが、立ち止まることは1つの手段なのです。だからこそより良いタイミングで古いモノに新たな命を吹き込むことができるのです」。
(中)デッドストックの70sのチャックテイラーに、重ね染めをして彼らのロゴを付けたもの。「古いモノに新たな命を吹き込む」という姿勢が顕著に表れている。(右)キャップを置いているのは、アルテックのスツールをカスタマイズし再加工したもの。昨年ドーバーストリートマーケット ギンザでインスタレーションの際には、ドローイングを施したスツールの販売も行った。
フラットな視点で
引き出される創造性
プロダクトにおける生地や素材に対して深い思考を持つのと同様に、生産におけるプロセスについてもチームの力を引き出すための考えがある。クリストファー「私たちはとても小規模な組織です。各々が型にはまったファッションの教育を受けてきたのではなく、自由に育ってきたこともあり、それぞれが持つ個性を信頼しています。そして組織の中ではヒエラルキーを意識しすぎず、個々が自分なりの意見を持つことが重要なのです。私にとってデザインすることと生地などを調達することが等しく重要な意味を持つように、生産という行為と、それを行う組織もまた等しく重要なのです」。〈アワー レガシー〉の取り組み、とりわけ『ワークショップ』は、現在と過去の均衡を保ち、またそのプロセスにおいても、組織に属する個々人の関係性を調和させ力を引き出していく。それぞれの活動、各々の役割を必要以上に区切らず、フラットな視点で捉える姿勢は、洋服との向き合い方にも通ずる。クリストファー「洋服について、たとえばテーラリングというようにひとつのカテゴリーに焦点を合わせるのではなく、すべてのカテゴリーを網羅しようと心がけています。カテゴリーというのは複雑な問題ですが、結果的にはすべて着心地につながっていきます。どうデザインしても、着心地の良い服であるべきだと思うのです」。カテゴライズに縛られない幅の広さは、柔軟で自由な風土によって支えられているのだろう。クリストファー「〈アワー レガシー〉とは、可変的で変わり続けること。そして自分たちの在り方に忠実でありたいと願っています」。ブランドとしての明確な意思が根付いているからこそ、それぞれのプロダクトがレガシーとなって続いていく。
PROFILE
Our Legacy
スウェーデンのストックホルムを拠点に活動するブランド。派手さはないが、洗練されたプロダクトの数々に、意志を宿していく。豊かな発想を感じさせるさりげないデザインが病みつきに。今回のテーマである『ワークショップ』のアイテムは基本的に本国のみでの取り扱いだが、その心意気はブランド全体のクリエイションに反映されている。
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