GRIND FEATURE TOPIC『GAME CHANGER』
Interview with YOON
この時代に何が必要かを
問うクリエイション
頭の中で、やりたいことや欲しいものを思い浮かべる。それをイマジネーションとして終わらせず、形にすることからはじまったのが、〈アンブッシュ®︎〉。デザイナー、YOONのパートナーである、VERBALが身に着ける理想のジュエリーが見つからない。だったら自分たちで作るしかない。ただ自らの頭の中にはっきりとある理想の形を追求する、オリジナルなモノづくりの過程や視点。何に染まることもなく、フラットな視点で世の中を見渡すYOONが、多忙な生活を送る中で日本の地方を訪れた。そこで感じた古くから伝わる伝統やゆるやかな時の流れ。彼女は20AWのコレクションを通して、忙しない時代に生きる我々に、今向き合うべきことは何なのかと問いかける。
穏やかな時の流れを
独自の世界観で
20AWコレクションのテーマは、「カントリーサイド」。リサーチで訪れた日本のカントリーサイドの情景や美しさが、多忙なYOONの目には新鮮に映り、クリエイションに影響を与えたという。ディオールのメンズジュエリーディレクターへの就任や、オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™を擁するニューガーズグループへの加入など、世界規模で活動を広げていくYOON。彼女が感じた、地方に流れるゆっくりとした時間こそが今回のコレクションを構成する重要な要素だ。「ヨーロッパのブランドと仕事をしていると、自分たちのヘリテージをとても大切にしていることに感銘を受けます。〈アンブッシュ®︎〉も、日本というルーツを大切にしたい。昔の人がつくる服はよく考えられていて賢いモノづくりですし、ルーツから学ぶことはたくさんあります。日本伝統の職人技も素晴らしいものが多く、次の世代にも繋がればいいなと思います」。時空を超えて、人から人へと独自に受け継がれる伝統。先人の知恵や技術に、新たな解釈を加えながら、現在、そして未来へと時間軸をまたいで伝えていく。アパレルラインで時間の流れを表現へと落とし込んだYOONは、ジュエリーラインにおいては「時間」の捉え方にフォーカスしている。「自動車は素早くいろいろなところに連れて行ってくれる便利な乗り物で、動いてこそ真価を発揮しますが、今回のルックではそれを地面に半分埋めて、"時間"が止まってしまったような感覚を表現しました」。
次から次へと新しいものに目移りする時代。2つのラインを通して彼女が示したいこととは。「ファッションは問題を直接的に解決することは少ないかもしれませんが、クリエイションを通して夢を見るお手伝いができたらいいなと思っています。先を見据えてリサーチをしたりプランを立てて、時代を見ながらクリエイションをしていくこと。ファッションは時代を映し出す鏡のようなものでもあると思います。その時代に何が必要とされているのかを見据えて、時代や問題に向き合いつつ、柔軟性をもってクリエイションをしていきたいです」。自分のエゴをぶつけるだけの創造ではなく、時勢を捉えて、伝えなくてはいけないメッセージを散りばめる。異常に早いサイクルや、一過性の消費的な流行など、既存のシステムに疑問を呈するようなニュアンスすら感じる今シーズン。それぞれのアイテムは、単にアイコニックなデザインとしての美しさを誇るのではなく、時の流れや時間の捉え方に焦点を当てることで、改めて重要な価値観を発信している。
市松模様から着想を得たというレザーのパッチワーク。江戸時代から受け継がれてきた日本独自の手法が、意外性のある素材の組み合わせによって、時を超えてアップデートされた。
着物のような襟が配されたミリタリー素材のアウター。
PROFILE
AMBUSH®
ファッションを独自で学んだYOONと、DJやプロデューサーとしてマルチな活躍を見せるVERBAL氏が2008年、実験的なジュエリーづくりとしてスタート。彼らの友人であるカニエ・ウェストやビッグ・ショーンといった、著名なアーティストが着用したことも相まってHIPHOPシーンを中心にその名を広める。その後、ジュエリーの延長線上にあるトータルコーディネートとしてアパレルラインを始動。YOONのディオール メンのジュエリーディレクターへの任命や、東京に第2号店となるショップをオープンするなど、近年更なる飛躍をみせる。
Instagram:@ambush_official/@yoon_ambush