EYTYS
Interview with Max Schiller
進み続けることで
居場所を形成する
独特な存在感を放つフットウエアからはじまり、デニムやTシャツ、アクセサリーなど、多岐にわたるアプローチで広く支持される〈エイティーズ〉。一足のスニーカーからはじまったその旅は、トライアンドエラーを繰り返すことでシューズブランドの立ち位置にとどまらずシーンの中で独自の世界観をつくってきた。その全てのプロダクトのデザインを担うクリエイティブディレクターのマックスの言葉から、〈エイティーズ〉のブランド哲学を紐解く。
Photo(atelier)_Max Schiller
Edit&Text_Fuka Yoshizawa
世界を広げる
正直なクリエイション
ストックホルムを拠点とする〈エイティーズ〉が始動したのは2013年。原点となる厚底スニーカー「MOTHER」は、新鮮なフォルムやカラーリングに加え、インソールにコルクを用いた履き心地の良さが話題となり、徐々にその名は広まっていく。現在に至るまでも数々の名品を生み出してきたが、プロダクトへの向き合い方は当初から変わらず、スタイルを一貫している。
「私にとってデザインは、自分自身、そして私に影響を与えてくれる人々のためのものです。たとえば青春時代に好きだったものを思い浮かべながら現代の文脈に合うよう再構築したり、クラシックなアイテムを扱いながら、どこまで斬新なプロポーションに挑戦できるか、快適さと実用性を備えられるか試行錯誤を繰り返したり。インスピレーションを与えてくれる人のためにデザインすることで純粋に面白いものが生まれ、それは見る人にも伝わります。求められているものだけをつくることや見た目だけに傾倒していては、ただの中途半端な完成品でしかないですからね」。
ファッションとは感覚的なものであるからこそ、自分に正直でいることが重要である。常に自身と周りに目を向け、そこで得た気付きや発見を積極的に取り入れる。その正直なクリエイションは、シューズというジャンルで築き上げた地位にとどまらず、自らの世界を押し広げていく。
「常に衝動と直感で行動するタイプなので、シューズからアパレルへと〈エイティーズ〉の世界観を広げることに対しては何の恐れもありませんでしたし、エキサイティングな挑戦は新たな可能性に気付くことができました。ただ、戦略や組織づくりなど、もう少し考えるべきことはありましたね。その時の感情で動いたことで失敗したこともありますが、私たちは失敗から学ぶし、経験を重ねることで賢くなっていきます。そういう意味でも〈エイティーズ〉は今も変化を続けながら成長しています」。
側から見ればサクセスストーリーにも思えるが、行動した先に確実な結果を残すことや、シューズブランドというイメージを変えることは簡単ではなかったはずだ。はじめこそ衝動的に突き進んでいたかもしれないが、失敗を重ねながらも貪欲にオリジナリティを追求し続けた。すぐに結果を求めてしまうなど効率化が進む現代において〈エイティーズ〉は、軸をブラさずに進み続けることが自身の輪郭を際立てスタイルとして確立していくこと、地道な努力が実を結ぶことを身をもって示している。
〈エイティーズ〉のアトリエ兼オフィス。無機質でクリーンな空間に飾られた本や無数の写真、付箋からは、ひとつのプロダクトをつくる過程において熟考を重ねている様子がうかがえる。
マックス・シラー
〈エイティーズ〉のクリエイティブディレクター。コレクションのデザインの一手を担う。〈アクネ ストゥディオズ〉のメンズウエア部門にてデザイナーとして活躍していた経験をもち、2013年に幼馴染のジョナサン・ハーシュフェルドを誘い自身のブランド〈エイティーズ〉を始動する。2017年からは、シューズだけでなくアパレルプロダクトの展開をはじめ、今ではシーズン毎にコレクションとして発表するなど、枠にはまらず活動の幅を広げている。