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Whiskey Bar 『Brother』 Whiskey Bar 『Brother』

CULTURE, INTERVIEW, MUSIC 2022.7.8

Whiskey Bar 『Brother』

Interview with Takaiwa Ryo

遊び心に火を灯す
“リッチストリート”

ソロとして、2つのバンドのフロントマンとして、さらにはアーティストとしての幅広い活動に飽き足らず、イケてる雑貨屋と銘打った『good junk store - Brother』のオーナーとして。増え続ける肩書きを振り返ることなく、歩みを進めていくのが高岩遼だ。この度、彼が代表を務めるオフィス高岩の総本山であり、『good junk store - Brother』の上階に位置する場所に、同じく『Brother』と名付けられたウイスキーバーをオープンさせた。音楽であっても、空間や店舗を通じてでも、彼にとっては自己表現の場。遊び心が根付いた小粋な遊び場は、“リッチストリート”という概念を三軒茶屋から発信する。

Photo Haruki Matsui
Edit & Text Shuhei Kawada

三茶の小さな夢の国

 三軒茶屋駅を出て、茶沢通りを下北沢方面に向かうと、夜はバナナのネオンが控えめに輝くビルがある。3階には、今年2月にオープンした『good junk store - Brother』を構えるが、4階にオープンしたウイスキーバー『Brother』はまた異なる様相を呈する。3階のエントランスにある黒電話を取ると、程なくして4階と繋がり、奥の扉のロックが解除される。「登記上の会社の本店所在地で、会社の事務所ということになってます。実際に1年半前、ここ三軒茶屋に仲間たちが集まれる、社交場兼株式会社オフィス高岩の事務所、そして俺自身のアトリエをつくったんです。音楽関係者や、文化人、クリエイターとさまざまな人に出入りしていただいて、数々のセッションが生まれてきたこの場所を、一般の人にも楽しんでもらいたいと思い、この度オープンすることにしました。広くはないけれど家の中にあるバーのような感じで、ジャズを中心に程よくいい音でウイスキーを中心にしたお酒と、名物のホットドッグを嗜める場所です。お金があってもなくても、路地裏に入れば少しいい気分で帰れるような、ジェンダー関係なく男はカッコつけて、女はキマる場所として楽しんでほしい。アメリカンウイスキーを揃えていますし、内装からも古き良きアメリカの雰囲気を味わえる。でも高岩フィルターを通しているから、東京感も合わせて楽しんでほしいですね」。

  • スライド

    ウッド調で統一された店内は、暗がりでも適度に温かな質感。バーカウンターの背後にテーブル席と、ドラムセットやピアノが並ぶ。アメリカンウイスキーとジャズを中心とした選曲に浸り、慌ただしい喧騒から距離を置いて、自分だけの時間を過ごしてほしい。

  • スライド

    ウッド調で統一された店内は、暗がりでも適度に温かな質感。バーカウンターの背後にテーブル席と、ドラムセットやピアノが並ぶ。アメリカンウイスキーとジャズを中心とした選曲に浸り、慌ただしい喧騒から距離を置いて、自分だけの時間を過ごしてほしい。

  • スライド

    ウッド調で統一された店内は、暗がりでも適度に温かな質感。バーカウンターの背後にテーブル席と、ドラムセットやピアノが並ぶ。アメリカンウイスキーとジャズを中心とした選曲に浸り、慌ただしい喧騒から距離を置いて、自分だけの時間を過ごしてほしい。

  • スライド

    ウッド調で統一された店内は、暗がりでも適度に温かな質感。バーカウンターの背後にテーブル席と、ドラムセットやピアノが並ぶ。アメリカンウイスキーとジャズを中心とした選曲に浸り、慌ただしい喧騒から距離を置いて、自分だけの時間を過ごしてほしい。

 選りすぐりの銘柄が揃う、アメリカンウイスキー。職人が手がけたホワイトオークというウイスキーの樽に用いられる木材を使用した内装。店内に並ぶピアノやドラムなどの楽器の数々。空間を漂う少し煙たい香り。バーでありながら、ごく私的な空気を残したこの場所はまさに、大人の遊び場と呼ぶにふさわしい。もちろんアーティストとしての顔が先行する高岩だが、彼にとってはこうした場づくりもまた表現のひとつ。「自分にとっては総合的なカルチャーとして、どれも取りこぼしてはいけないと考えています。全てをまとめた上で、俺の声だったり、俺のステージ、俺の表現があるんです。二兎を追うどころか、三兎、四兎、五兎って追ってるわけだから、もちろん悩んでいた時もありますが、結局は表現者でありたいってこと。パブリックにおけるイメージで一番強いのが歌手というだけで、俺は多様性をもって、歌詞を書いたり作曲したりしています。従来のミュージシャンというわけではないかもしれないけど、それが俺のJAZZ LIFEだから」。音楽のジャンルとしてではなく、生き方としてのジャズが高岩の中を流れる血そのもの。二兎を追う者は一兎も得ずなんて言葉は彼を止めることはなく、むしろ自分のあらゆる表現を通じてそんな意味合いをひっくり返そうとしているようにも思える。

  • スライド

    こちらは3階の『good junk store - Brother』の様子。所狭しと並ぶ、どこか懐かしいおもちゃや雑貨の数々が、心をくすぐる。バーとはまた異なる様子だが、どちらの店舗にも、高岩遼が積み重ねてきたカルチャーが偽りなく反映されている。これこそがまさに彼の中にある振り幅と言えるだろう。

  • スライド

    こちらは3階の『good junk store - Brother』の様子。所狭しと並ぶ、どこか懐かしいおもちゃや雑貨の数々が、心をくすぐる。バーとはまた異なる様子だが、どちらの店舗にも、高岩遼が積み重ねてきたカルチャーが偽りなく反映されている。これこそがまさに彼の中にある振り幅と言えるだろう。

  • スライド

    こちらは3階の『good junk store - Brother』の様子。所狭しと並ぶ、どこか懐かしいおもちゃや雑貨の数々が、心をくすぐる。バーとはまた異なる様子だが、どちらの店舗にも、高岩遼が積み重ねてきたカルチャーが偽りなく反映されている。これこそがまさに彼の中にある振り幅と言えるだろう。

エントランスの黒電話を取ると、4階へと通じる扉が開く。「奥の扉が開くと、なにかがあるというエンターテイメントこそ、ワイルドで不良性があってかっこいい」のだと高岩は話す。

ネクタイを締めるということ

 歳を重ねるにつれて、生活の中で大切なものができたり、何か守らなくてはいけないものができたりと、人生における変化が段々と生じてくるのは当然とも言える。しかし、ストリートを愛する我々にとって、遊びの感覚は常にどこかに忍ばせていたいもの。“リッチストリート”という概念には、そんな意識が透けて見える。「ストリートと言って、誰かを貶したり、ダーティーなことをしたりする必要はない。やっぱり良いものを知るということが、人の幅を広げるわけで。どんなに金がなくても、逼迫していても、ストリートにおいてネクタイを締めるということが大切なんです。ネクタイを締める経験をしないと、ダボいパンツもキマらないんですよ、マジでそう思うんです。あえて男という言葉を使いますけど、常に男にはそういう色気がないと、どんなスニーカーを履いても、ブランドの新作を着ていても、結局は着させられているだけになってしまう」。本質を知った上で、はじめて成立するハズしということだろうか。自分の中の振り幅があれば、ちょっとした遊びもまた贅沢なものになるはずだ。「この場所が、燻っている俺らの世代や、さらに下の世代がリッチな気分になれるストリートであってほしいし、そのためにはディテールも本格的でないといけないんです。ファッショナブルで、かっこよくて、フレッシュで、でもどこかユーモアがあるというか。30歳を過ぎてくると、日々の生活の中でガキの頃の感覚を忘れてしまう。だからこそ、その感覚を自分より歳が上でも下でも感じられる、非現実的な場所でありたいです」。ここ最近は飲食店に限らず、気軽に立ち寄れる遊び場がどんどん少なくなっているようにも感じられる。でもいつだってリアルな現場からワクワクする動きが生まれてきたはずだ。知識としての吸収だけでなく、五感で味わえる機会があるのなら、もちろんそのほうが濃密な経験となって自らに刻むことができるだろう。この度三軒茶屋でスタートしたこの『Brother』に足を運んで、“リッチストリート”の意味合いを噛み締めてほしい。

  • スライド

    三軒茶屋という土地は、程よくローカルの空気を残しており、この場所に根を張ることもまた意味をもつ。「当初、三茶に対してカフェ文化や芸能人みたいなイメージをもっていたんですが、下町なんですよ。この太子堂の周辺でも、常連のおじいちゃんおばあちゃんが飲んでいたりして。でもそういう人たちの会話はなんか東京っぽかったりして、すごくいい街だなと思ったんです」。その地に根ざしながら、新たなカルチャーを発信する秘密基地として、『Brother』は第一歩を踏み出した。

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    三軒茶屋という土地は、程よくローカルの空気を残しており、この場所に根を張ることもまた意味をもつ。「当初、三茶に対してカフェ文化や芸能人みたいなイメージをもっていたんですが、下町なんですよ。この太子堂の周辺でも、常連のおじいちゃんおばあちゃんが飲んでいたりして。でもそういう人たちの会話はなんか東京っぽかったりして、すごくいい街だなと思ったんです」。その地に根ざしながら、新たなカルチャーを発信する秘密基地として、『Brother』は第一歩を踏み出した。

Information

Brother

〒154-0004 東京都世田谷区太子堂3-15-5バナナビル4F
三軒茶屋駅徒歩7分
営業時間 18:00〜23:00
水曜定休(臨時休業あり)
070-2276-0012
Instagram @brother_4F
@gjsbrother_3F

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