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『THE MISSION』: NIGHTHAWKS 『THE MISSION』: NIGHTHAWKS

FASHION, INTERVIEW 2023.2.7

『THE MISSION』: NIGHTHAWKS

Interview with Takayasu Ishiyama

ファッションに限らず、あらゆる種類の店舗や人々が集まり、常に流行の中心地と目される東京。一方で東京以外の各都市に目を向けると、中心地とは少し離れた場所で、独自のスタイルを磨きつづけるショップがある。そうした東京以外の都市で育まれるオリジナリティや、そこに集う人々の熱量を掴むべくスタートした『THE MISSION』という企画。各都市を代表するショップやスペースと手を組み、本誌の販売やイベントを開催することで見えてくる、カルチャーの可能性とは。第1回は福岡県の今泉地区にショップを構える〈NIGHTHAWKS〉について、代表の石山貴尉へとインタビューを実施。ロンドンの気鋭セレクトショップで培った経験と独自の視点を武器に、自身の地元でもある福岡から発信する、スタイルの根底に迫る。

Photo_Haruki Matsui

カルチャーを売る

 12月上旬にスタートした、GRIND WEBでの新企画『THE MISSION』。バックナンバーを含む本誌の販売、及びトークイベントを実施し、多くの福岡の方々との交流を通して、ファッションやカルチャーへの渇望を肌身をもって感じるに至った。各都市で渦巻く高い熱量に対して、アクセスして実際の現場を通してコミュニケーションを図ることが、爆発的ではないにせよ、少なからず日本のファッションシーンのおもしろさを広げていくきっかけになればというのが本企画の趣旨だ。

当日はトークイベントに際して、20人近くがお店へと足を運んでくれた。熱量をもって、自分の愛するファッションやカルチャーのストーリーを求める彼らの姿は、情報が溢れかえる今の時代だからこそ、欠かせないものだと身をもって感じることができた。

 そんな企画の第1弾という駆け出しの段階をともに支えてくれたのが、福岡県の中心地天神から少し離れた、今泉地区にある〈NIGHTHAWKS〉。ナマチェコをはじめGRINDでもゆかりのあるブランドを取り扱うが、そのブランドのセレクトにも振り幅があり、入り混じるカルチャーを楽しんでいるのが伝わってくるのだが、代表の石山貴尉の背景を探っていくと、リンクする部分が見えてきた。「大学時代からファッションは好きで、アパレル業界に進みたかったんですけど、一度印刷会社に就職しました。しかし結局ファッションの道へ行きたくなり、1年で仕事を辞めて、ファッションビジネスを学ぶ専門学校に入学しました。そこでファッションPRの会社のインターン募集を見かけて、そこで働いていたらとても楽しくて、だんだん学校にも行かなくなって。インターンをしていたPR会社は海外のブランドを扱っていて、英語かフランス語が必須だということで、すぐに学校も辞めてロンドンへと渡りました。ロンドンで仕事を探していましたが、なかなか見つからずというタイミングで、LN-CCというセレクトショップが新しいお店をオープンするという記事を見かけて、連絡を入れて働けることになり、そこで3年くらい働いていました」。2010年頃にオンラインストアとしてスタートし、ラグジュアリーからストリート、デザイナーのアーカイブまで幅広い洋服を取り揃え、書籍や音楽なども取り扱っていたセレクトショップにて、研鑽を積んでいた石山。今でこそ、こうしたミックスの感覚は広がってきてはいるが、当時のリアルを知る彼が“LN-CCで受けた影響が、ほぼ自分のすべて”と言い切るほどなのだから、カルチャーが渦巻く様は相当に刺激的だったことが伺える。

 ロンドンで食らったカルチャーショックは、ブランドのセレクトなどにも反映されるとともに、根底にある考え方やスタンスへと直結している。「“わかりにくさ”ということを大切にしています。簡単に理解されちゃうと楽しくないじゃないですか。ブランドもそうだし、ブランドのミックスも、“ここにはたどり着かないでしょ”ということを提供していきたいんです。そのために、その洋服をつくっているデザイナーがどういうものに影響を受けているかとか、自分が知らなかったら触れてみて、自分なりに紹介する。ただ洋服を買ってもらうだけでなく、もっといろんなことを知ってもらうという部分を重要視していて、ファッションとしてだけではない、カルチャーを売るようにしています」。

  • スライド

    気鋭のブランドだけを並べるのではなく、ジャンルを超えたミックスによって〈NIGHTHAWKS〉らしさが形成される。書籍などの取り扱いもあり、洋服だけではない興味の幅を刺激して、カルチャーとして届けていく。

  • スライド

    気鋭のブランドだけを並べるのではなく、ジャンルを超えたミックスによって〈NIGHTHAWKS〉らしさが形成される。書籍などの取り扱いもあり、洋服だけではない興味の幅を刺激して、カルチャーとして届けていく。

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    気鋭のブランドだけを並べるのではなく、ジャンルを超えたミックスによって〈NIGHTHAWKS〉らしさが形成される。書籍などの取り扱いもあり、洋服だけではない興味の幅を刺激して、カルチャーとして届けていく。

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    気鋭のブランドだけを並べるのではなく、ジャンルを超えたミックスによって〈NIGHTHAWKS〉らしさが形成される。書籍などの取り扱いもあり、洋服だけではない興味の幅を刺激して、カルチャーとして届けていく。

メジャーとアングラの往来

 洋服だけではなく、それに付随するカルチャーを伝えていく場所〈NIGHTHAWKS〉。福岡に根を張ることにも、意味がある。「注目されている面もあるし、人口が増えて、再開発も進んでいるし、おもしろいアーティストだっていっぱいいると思うんです。でも、そのローカルの部分に、自分のように海外で見てきたものをミックスすれば、街の多様性も増してもっとおもしろくなっていくと思うんです。今はまだ福岡でも受け入れられていないかもしれませんが、自分がやっていることを、もっとメジャーな方向にもっていきたいです。福岡におけるファッションの優先順位をあげたいという思いがあるので、そのためにはもっと規模感を大きくして、多くの人に見てもらわなくてはいけない。メジャーとアンダーグラウンドを行き来するような感じでやっていきたいんです」。石山曰く“良くも悪くもミーハーな街”だという福岡において、ファッションへの興味自体を引き上げていくために、より多くの人との接点が必要だという。しかしスタンスを変えずに規模を拡大していく難しさは常につきまとうはずだ。そんな状況でも、信念をもって突き進んでいく。お店に冠されるインディペンデントという言葉は飾りではない。「ファッションという自分の好きなものの延長線上にあってはじめた仕事なので、利益だけを求めてブランドを取り扱っても、嘘になってしまいます。せっかく好きなものを仕事にしているから、自分が好きなものだけを扱いたいんです。インディペンデントであるということは、責任をもつこと。バックがついていない分、楽しくやるって決めて突き進むのも、すべて自分の責任になってくるので」。ジャンルやカテゴリーで服を選ぶのではない。〈NIGHTHAWKS〉がセレクトするアイテムの数々には、どれもストーリーが連なっている。ファッションを入り口に、そこから広がる世界に飛び込むことで、スタイルのヒントに出会えるだろう。そしてスタイルをもつ人々が集う場所から、いつだってカルチャーが生まれてきたはずだ。

オーナーの石山貴尉。好きなものを伝えていくことと、その責任をもつこと。簡単ではない道を歩むからこそ、こうした都市からカルチャーが生まれてくるのだと痛感した。

Information

NIGHTHAWKS

https://www.nighthawks-fk.com/

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